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「TPPが食料安保を脅かす」という非常識

第9回 北岡伸一・東京大学法学部教授

  • 市村 孝二巳

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2011年11月17日(木)

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 「TPP(環太平洋経済連携協定)に参加すれば、食料自給率は13%に低下する」…。TPP亡国論の柱の1つが、農水産物の関税障壁を削減・撤廃すると、安い輸入食料が増えて日本の食料安全保障が脅かされる、という主張だ。食料品価格の低下で大きな恩恵を受けるはずの消費者までTPP反対へと靡かせようと、「農薬まみれの野菜や遺伝子組み換え食品が大量に出回る」といった流言蜚語を撒き散らしているという問題がある。

 政治学、安全保障論の専門家として、さらには日本外交の現場経験も踏まえ、食料安保が自由貿易反対の論拠として語られてきたのは「非常識」と一刀両断するのが、北岡伸一・東京大学法学部教授だ。TPPによって自由貿易体制を守るアジア太平洋の国々と連携を強め、いまだ法の支配が根付いていない中国やロシアを仲間に引き込むことこそ、日本の食料安保強化につながる、と唱える。

北岡伸一氏略歴
 1971年東京大学法学部卒、76年同大学院法学政治学研究科博士課程修了、立教大学法学部専任講師、同助教授、同教授を経て、1997年東京大学法学部教授。2004年特命全権大使(日本政府国連代表部次席代表)、2006年より現職に復す。専門は日本政治史、日本外交史、政軍関係、政党と政治指導、日米関係、国連。主な著書は『グローバルプレイヤーとしての日本』『日本政治史~外交と権力』など多数。
(写真:清水盟貴)

 安全保障論の観点から、TPPの話をしてみたい。

 食料安全保障という言葉は長年、いろいろなFTA(自由貿易協定)・EPA(経済連携協定)に対する反対の論拠として語られてきた。その非常識が長年続いているというのが実態である。コメは神聖不可侵であるという議論が30年以上続いているのも事実だ。

 食料がなくなって我々が飢える、ということは本当に起こるのだろうか。過去数十年の歴史で見ると、1973 年のオイルショックで、石油価格が急騰し、供給の途絶が懸念された。日本は中東の石油への依存度が非常に高かったため、対応の努力は必要だったものの、後から考えれば、実際に困ることはほとんどなかった。

 これは象徴的な事実で、仮に国内でコメが収穫でき、カロリーを100%自給できても、エネルギーがなければやっていけない。戦前のブロック経済の時期にも、世界で貿易が途絶して飢える国が出たことはない。今、国際的に孤立している北朝鮮や、戦前の日本のようでなく、良きグローバルシチズンである限り、そのようなことはほとんど起こらない。

 とは言え、飢饉が起こった時にはどうすればいいのか。一番良い対処法は豊かな経済を持ち続けることだ。江戸時代の飢饉で、どこで人が亡くなったかと言えば東北である。当時コメの集積地だった大阪や江戸では、飢えは起こらない。お金があればモノが買える。それが現実だ。日本人が飢えを経験しないためには、豊かな経済を維持することが第一だ。

 しかし、世界が大混乱に陥らないことも望ましい。そのためには、世界の秩序が維持されることが重要である。だから食料安全保障の一番重要な手段は日米安全保障体制かもしれない。ともあれ、世界の安全な秩序、安定した国際的な安全保障が維持されるために、やや不安な材料は例えば中国だ。尖閣問題に関してレアアースの輸出を止めるような、政治と経済をくっつけてレバレッジとして使う乱暴な動きがある。一部の全体主義的な国家は市場原理ではなく、経済への介入をやりうる。ロシアはグルジアへの天然ガスの供給を停止したことがある。このような乱暴な行為を不思議と思わないメンタリティーの国がある。

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