「キャリア教育者の大学ぶっちゃけ話」

就職留年すれば内定が取れるのか?

大学4年生に教えたい大学5年目のリアル

  • 沢田 健太

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2011年11月29日(火)

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 いずれキャンパスを巣立っていく若者らに教えるべきは、「どんな場所でもやっていける自分になる」ことの重要性ではないか。そんな思いでキャリア形成支援の仕事に携わってきた大学職員が、この秋、『大学キャリアセンターのぶっちゃけ話』という新書を著し、教育や人事関係者の間で話題となっている(現在3刷目)。

 当コラムは、その著者が本の中では語り尽くせなかったトピックを取り上げていく書下ろしだ。第1回は「大学中退者」の増加問題、第2回では「SPI対策」までもが正規科目となり始めている大学教育の迷走ぶりをレポートした。

 第3回目のこのコラムでは、リーマンショックを境に「制度」と化しつつある「就職留年」について、大学生の就職活動に長く関わってきた一職員の立場から、そこに潜む問題を考える。

 たった今、大学4年で未内定者の学生は、「就職留年」という選択肢をどう捉えたらよいのだろう。当事者たちへのアドバイス形式で話を展開しながら、当事者以外の読者のためにも問題の詳細をお伝えする。

 前回の拙稿に対してもコメント欄で、読者の方々の貴重なご体験や、建設的、根本的なご意見をいただき、誠にありがとうございました。折に触れて読み返し、咀嚼しようと努めています。

 さて、今回は、編集担当者が前説したように、「就職留年」について考えてみます。ぜひ取り上げたいと、私自身が希望しました。

 なぜなら、例年この時期の大学キャリアセンターでは、未内定の4年生が「就職留年を考えているのですが…」と相談してくるケースが多くなるからです。

 就職未内定の4年生にとって、今現在は、最後の決断を迫られている時期です。年明けには後期試験があり、試験を実施しない授業の多くは課題レポートの提出を必須としています。来年度も大学に残って就職活動に再挑戦するならば、個々の履修状況に応じて、いくつかの試験やレポート、あるいは卒論などをわざとサボらなければなりません。卒業所要単位数を満たさない、同時に再履修の負荷とならない、微妙な単位の残し方を考える必要が生じるわけです。

 そして、留年を「する/しない」で迷える年生が、キャリアセンターに「答え」を求めにくるのです。親御さんと揉めてしまい、精神的な「救い」を求めている学生も少なくありません。就職活動に関してはマイナスの経験ばかりを積み重ねてきてしまったケースが主流ですから、キャリアセンター職員にとっても難しい相談です。そう簡単に「答え」は出せません。

 「就職留年をすれば、来年は受かりますか?」。単刀直入というか、軽佻浮薄とも受け取れる質問を口にする学生もいます。日本語が下手なだけで、実は本人なりに相当悩んだ末の質問であったりするのですが、これを言われると私は正直、げんなりします。でも、げんなりさせられる就職留年の相談が、少なくとも私の知る範囲では増えています。

「救済策」が「制度」に化けている

 ちなみに、就職留年者数をズバリ示す公的データはありません。ですが、「最低修業年限(4年)を1年超過して卒業した者(大学学部)」の人数は、文部科学省の「学校基本調査」にあります。東日本大震災によって甚大な被害を受けた岩手県、宮城県及び福島県に所在する大学が調査対象に含まれていない平成23年度の調査結果(速報)では、4万5062人となっています。

 3県分が含まれていた前年度の調査結果より537人増です。平成23年度調査の速報では、「一般に、就職率が低い時期に該当者が増える傾向にある」と指摘しています。

 また、これも参考程度の話ですが、私が方々の大学キャリアセンターの職員にヒアリングしてみたところでは、「就職留年者は上位校を中心に増加傾向にある」というのが共通認識でした。たいていの大学生は企業の大学名差別を嫌っていますけれども、上位校の学生の本心は「○○大生なのだから、それなりの企業には入らねば」となりがちです。

 対して、下位校の学生ほど、就職先が決まらない場合はフリーターに流れていきがちです。わざわざ就職留年してまで大学に残るより、大卒の肩書きがあっても非正規の職に就くほうに向かいます。

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