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価格メカニズムによる電力需給調整は万能か

「リアルタイム市場」への疑問点(前編)

2011年12月14日(水)

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 東日本大震災・福島第1原子力発電所事故を発端に東北・関東地域で発生した電力不足は、菅直人前首相が唐突に原発へのストレステストの実施を持ち出したことを発端に、全国に広がった。

 2011年の夏は、企業などの節電努力と電力各社の供給力確保の取り組みによって、何とか停電を起こすことなく乗り切ることができた。しかし、2011年の冬も引き続き電力の需給はタイトであり、原発が再稼働されなければ、2012年の夏はより深刻な状況に陥るとの見通しが政府から発表されている。

 こうした中、経済学者からは、価格メカニズムの活用により需要の抑制を図るべき、との提案がされている。日本経済新聞の「やさしい経済学」で八田達夫・大阪大学招聘教授がシリーズ「電力自由化を考える」(2011年10月17日~10月31日付け朝刊 全11回)で提言された「リアルタイム市場の形成」はその1つである。

 筆者は、電力市場の専門家ではないしアカデミックな経済学研究者でもないので、八田教授のアイデアについての理論的な評価は専門家に譲る。

 しかし、理論と現実にはギャップがつきものだ。このアイデアが問題なく実施可能かどうか、可能であるとすればどのような点を検討し忘れないようにすべきかについては、電力供給の実態を踏まえて考えておくべきだろう。こうした問題意識から、複数の電力関係者からヒアリングを行い、結果としていくつかの論点や疑問点が浮かび上がってきた。筆者としては、ここで取り上げる問題について、専門家の間でさらに議論を深めていただければ有意義ではないかと考える。

日本の価格メカニズム

 価格メカニズムを活用した需要の抑制方法とは、端的に言えば、需要がピークの時または電力需給がタイトな時に、電気料金を高くすることである。電気料金が高くなれば、ユーザーは不要不急の電気利用を控えるか、価格が安い時間に需要をシフトする。

 価格メカニズムの活用については、日本の電力会社も従来から一定の取り組みを行っている。それは、毎年夏が来るたびに発生するピーク需要を抑制して、需要を均すことに主眼がおかれていた。ピーク需要を抑制すれば、ピークに備えて年間の限られた時間しか運転しないような発電所を持つ必要がなくなり、需要がオフピークにシフトすることで発電設備の稼働率が向上する。いずれも電力コストの低減につながる。

 具体的な方法は、季節別・時間帯別に料金単価を変化させ、電気料金が高い時間帯から安い時間帯への電力使用のシフト(ピークシフト)を促す。季節別・時間帯別の料金単価があらかじめ知らされているので、ユーザーはピークシフトを行った場合の費用対効果を把握しやすい。この電気料金制度の導入によって、ユーザーも、生活パターンや生産活動のパターンのシフト、夜間蓄熱機器の導入などを計画的に行うことができるようになった。

 その結果、2000年頃には50%台半ばと低い水準にあった日本の年負荷率(ピーク需要に対する年平均需要の割合)は、最近では60%台半ばと大幅に改善している。

 主要国の年負荷率を表1に示した。電力需要の年負荷率は、その国の産業構成などにも影響されるが、概して冬がピークの国は夏がピークの国よりも負荷率は高くなる(日本で唯一、冬ピークの北海道の年負荷率は以前から70%を超えている)。表1の中で、夏がピークの国は日本と米国だけであり、ほかはすべて冬がピークであることを考えると、日本のここ10年くらいの改善によって、負荷率の水準は少なくとも他国並みにはなっていると言えるだろう。

●表1 主要国の電力需要における年負荷率(2009年実績。ノルウェーのみ2008年実績。単位%)
出所:海外電気事業統計2011、ノルウェーはAnnual Statistics 2008(Nordel)を基に算定

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「価格メカニズムによる電力需給調整は万能か」の著者

澤 昭裕

澤 昭裕(さわ・あきひろ)

国際環境経済研究所所長

1981年一橋大学卒業、通商産業省入省。1987年プリンストン大学にてMPA取得。資源エネルギー庁資源燃料部政策課長などを経て2004年8月から2008年7月まで東京大学先端科学技術研究センター教授。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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