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電力市場の“理想型” ノルウェーに日本はなれない

「リアルタイム市場」への疑問点(後編)

2011年12月15日(木)

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確定数量契約は今でもできる

 前回に引き続き、八田達夫大阪大学招聘教授が日本経済新聞「やさしい経済学・電力自由化を考える」(2011年10月17日~10月31日付け朝刊 全11回)で提案した「確定数量契約」と「リアルタイム清算」の導入について考察を続ける。

 「確定数量契約」と「リアルタイム清算」の需要を抑制する効果が期待ほどではないにしても、現に当面は日本の電力需給はタイトな状況が続くので、多少なりとも効果があるならやるべきだ、といった論もあろう。八田教授によると、「確定数量契約」は、「リアルタイム清算」による需要の抑制以外に以下の3点のメリットがある。

 第1に、小売り会社は、当日の需要の変動に備える必要がなくなる。需要が変動するリスクはユーザーがとることになるので、その分契約価格を引き下げることが可能になる。

 第2に、小売り会社は、自社の電源を需要の変動に備えて用意する必要がなくなるので、その分の余力を前日のスポット市場などに売って、収益を得ることが可能になる。

 第3に、前日のスポット市場の価格が高いときは、ユーザーが電気の消費計画を見直して、需要を抑制し、当初確保していた電気をスポット市場に売り戻せば、ユーザーは利益を得られる。これは需給がタイトなときに需給を緩和する方向に働く。

 八田教授は、ユーザーが系統運用者である電力会社に、翌日の需要の計画値を届け出る制度がないため、今の日本では「確定数量契約」はできないとしている。

 確かに日本では、ユーザーが直接電力会社に翌日の需要の計画を提出していない。しかし、現行の規則体系の下でも、新規参入小売り会社(PPS)とそのユーザーとの間でそうした契約を結ぶことは可能で、実際にPPSは電力会社に翌日の発電と自らの顧客の電力需要の計画値を提出している。

 もちろん、PPSは必ずしもその計画に沿って発電するわけではなく、当日の自分のユーザーの需要が変動すれば、それに合わせて発電を調整する。それでも全くぴったり発電と需要が合致するわけではないので、結果生じた乖離分は電力会社が供給することになる。その時に適用される電力供給の単価を「インバランス料金」(*1)と呼ぶ(*2)。

 こうした制度はPPSと電力会社との間の関係だが、PPSとユーザーとの契約交渉で、ユーザーが前日に立てた計画通りに電気を消費することを約束し、その約束を果たせない場合、ペナルティを払うという契約を結ぶことは現状でも可能である。これは、ユーザーから見れば、PPSとの間で「確定数量契約」を結ぶことを意味する。



*1 インバランス料金は、リアルタイムの需給調整に係る対価であり、その点では前述した「リアルタイム料金」と同質のものであるが、日本の今の制度では電力会社が専ら供給することになっているので、規制料金となっている。個々のPPSについて、30分ごとの需要と供給の乖離が当該PPSの最大需要の3%以内の場合には、電力会社の平均発電コスト相当と安めに設定されているが、3%を超える場合は、単価は3倍となる。

*2 インバランス料金が適用されるのは、需要が過多になった場合であり、供給が過多になった場合は、余剰となった電力を電力会社が平均燃料費相当で買い上げる。ただし、電気は供給が多すぎても安定供給上問題が生じるため、余剰分が当該PPSの最大需要の3%を超過する部分については、無償引き取りとなる。

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「電力市場の“理想型” ノルウェーに日本はなれない」の著者

澤 昭裕

澤 昭裕(さわ・あきひろ)

国際環境経済研究所所長

1981年一橋大学卒業、通商産業省入省。1987年プリンストン大学にてMPA取得。資源エネルギー庁資源燃料部政策課長などを経て2004年8月から2008年7月まで東京大学先端科学技術研究センター教授。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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