障害者は決して特別な存在ではない。多様な個性が織り成す「ダイバーシティ社会」で重要な役割を担うプレイヤーの一員であり、これからの超高齢社会ではその出番や役割はどんどん増していくだろう。ただ、「働く」という観点で見ると、現在はまだ様々な支援が必要な“就労マイノリティー”であることは否定できない。
けれども、翻って考えると、働く場や社会の中の居場所がなかなか見つからない人たちは他にもいる。妊娠中や子育て中の女性、病気療養中の人、定年後も働く意欲のある高齢者、学校を卒業しても就職先がない若者たち−−。そんな人々と障害のある人たちを「社会とのつながり」の中で“同列”に捉え、支援の手を差し延べようと考えるソーシャルベンチャーが誕生している。
今回は2人の社会起業家を取り上げる。1人は、市場調査などの医療関連コンサルティングや中小企業の社員向けヘルスケアサービスなどを手掛けるブライト・ソレイルズ(東京・港区)の山中晶子社長。7年前に米国で「女性」と「医療」を切り口とするコンサルティング企業を立ち上げた直後、自身が膠原病(関節リウマチ)を発症したことから、慢性疾患患者や障害者向けのサービス開発を事業領域に加えた。その一方で、子育て中の女性や障害のある人が継続的に働き続けられる組織・勤務形態を実現する経営手法の開発にも挑戦している。
もう1人は、2011年11月に「株式会社よりよく生きるプロジェクト」(東京・豊島区)を立ち上げた矢辺卓哉社長。妹が障害者だったことなどから大学卒業後、障害者を専門とする就職支援サービス会社に就職し、実績を上げた後に起業。自らのサラリーマン時代の挫折体験などを踏まえて、社会の中で居場所を探す若者たちの「生き方」そのものを支援するサービスの実現を目指し、「わか部」と名付けた“サークル活動”をスタートさせた。もちろん、障害のある人たちも「わか部」の大事な対象と考えている。
女性、若者、そして障害者。両社に共通するのは、自身の人生経験やキャリア形成の中で問題意識をはぐくみ、その解決策を創り出そうとしている点だ。いわば“等身大のダイバーシティ・マネジメント”への挑戦である。社会問題を自らに課せられた問題と捉える「当事者意識」の高まりこそが、若い社会起業家たちが推進する新しい障害者支援ビジネスの重要な要件になっている。
米国での起業直後に関節リウマチを発症
「最初に着眼したのが女性。そこから患者、障害のある人という視点が加わり、今は高齢者や外国人も視野に入ってきています。これらの人たちがもう少し快適に暮らせる健康支援サービスを提供し、ダイバーシティな社会作りに貢献していくことが私たちのミッションです」。
ブライト・ソレイルズの山中晶子社長は自社の事業ドメインをこんなふうに説明する。社名は「輝く太陽」を意味する英語とフランス語の合成語で、「女性の未来を照らす、患者の毎日を変える」をコンセプトにビジネス展開を図っている。オフィスは、若い起業家が集まる東京・外苑前のインキュベーションオフィス「クロスコープ青山」にある。
具体的には、(1)中小企業の社員を対象にした看護師による電話相談サービス「テレナーシング」、(2)患者市場調査や新事業サポートなど、医療機関や生活用品メーカーなど向けの医療関連コンサルティング、(3)医薬品メーカーのMR(医療情報担当者)や一般企業の人事部員などを主な対象にした医療・ダイバーシティ研修−−などを主力事業にしている。
同社の社員は現在11人で、その多くが看護師、保健師、助産師、心理カウンセラーなど医療・福祉の専門資格を持つプロ集団だ。さらに社外には、「プラネット」と名付けた、医師や看護師など数十人の協力スタッフの組織がある。これらの社内外の専門スタッフがプロジェクトごとにチームを組み、各事業を運営していることが同社の事業モデルの最大の特徴となっている。
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