「社会起業家の「障害者支援ビジネス」」

障害者だけでなく、女性や若者も

ブライト・ソレイルズ/よりよく生きるプロジェクト−−働く場が見つからない人たちを支援

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2012年1月19日(木)

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 障害者は決して特別な存在ではない。多様な個性が織り成す「ダイバーシティ社会」で重要な役割を担うプレイヤーの一員であり、これからの超高齢社会ではその出番や役割はどんどん増していくだろう。ただ、「働く」という観点で見ると、現在はまだ様々な支援が必要な“就労マイノリティー”であることは否定できない。

 けれども、翻って考えると、働く場や社会の中の居場所がなかなか見つからない人たちは他にもいる。妊娠中や子育て中の女性、病気療養中の人、定年後も働く意欲のある高齢者、学校を卒業しても就職先がない若者たち−−。そんな人々と障害のある人たちを「社会とのつながり」の中で“同列”に捉え、支援の手を差し延べようと考えるソーシャルベンチャーが誕生している。

 今回は2人の社会起業家を取り上げる。1人は、市場調査などの医療関連コンサルティングや中小企業の社員向けヘルスケアサービスなどを手掛けるブライト・ソレイルズ(東京・港区)の山中晶子社長。7年前に米国で「女性」と「医療」を切り口とするコンサルティング企業を立ち上げた直後、自身が膠原病(関節リウマチ)を発症したことから、慢性疾患患者や障害者向けのサービス開発を事業領域に加えた。その一方で、子育て中の女性や障害のある人が継続的に働き続けられる組織・勤務形態を実現する経営手法の開発にも挑戦している。

 もう1人は、2011年11月に「株式会社よりよく生きるプロジェクト」(東京・豊島区)を立ち上げた矢辺卓哉社長。妹が障害者だったことなどから大学卒業後、障害者を専門とする就職支援サービス会社に就職し、実績を上げた後に起業。自らのサラリーマン時代の挫折体験などを踏まえて、社会の中で居場所を探す若者たちの「生き方」そのものを支援するサービスの実現を目指し、「わか部」と名付けた“サークル活動”をスタートさせた。もちろん、障害のある人たちも「わか部」の大事な対象と考えている。

 女性、若者、そして障害者。両社に共通するのは、自身の人生経験やキャリア形成の中で問題意識をはぐくみ、その解決策を創り出そうとしている点だ。いわば“等身大のダイバーシティ・マネジメント”への挑戦である。社会問題を自らに課せられた問題と捉える「当事者意識」の高まりこそが、若い社会起業家たちが推進する新しい障害者支援ビジネスの重要な要件になっている。

米国での起業直後に関節リウマチを発症

 「最初に着眼したのが女性。そこから患者、障害のある人という視点が加わり、今は高齢者や外国人も視野に入ってきています。これらの人たちがもう少し快適に暮らせる健康支援サービスを提供し、ダイバーシティな社会作りに貢献していくことが私たちのミッションです」。

 ブライト・ソレイルズの山中晶子社長は自社の事業ドメインをこんなふうに説明する。社名は「輝く太陽」を意味する英語とフランス語の合成語で、「女性の未来を照らす、患者の毎日を変える」をコンセプトにビジネス展開を図っている。オフィスは、若い起業家が集まる東京・外苑前のインキュベーションオフィス「クロスコープ青山」にある。

 具体的には、(1)中小企業の社員を対象にした看護師による電話相談サービス「テレナーシング」、(2)患者市場調査や新事業サポートなど、医療機関や生活用品メーカーなど向けの医療関連コンサルティング、(3)医薬品メーカーのMR(医療情報担当者)や一般企業の人事部員などを主な対象にした医療・ダイバーシティ研修−−などを主力事業にしている。

 同社の社員は現在11人で、その多くが看護師、保健師、助産師、心理カウンセラーなど医療・福祉の専門資格を持つプロ集団だ。さらに社外には、「プラネット」と名付けた、医師や看護師など数十人の協力スタッフの組織がある。これらの社内外の専門スタッフがプロジェクトごとにチームを組み、各事業を運営していることが同社の事業モデルの最大の特徴となっている。

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著者プロフィール

高嶋 健夫(たかしま・たけお)
フリーランス・ジャーナリスト

1956年東京都生まれ。79年早稲田大学政治経済学部卒業後、日本経済新聞社に入社。宇都宮支局、東京本社編集局産業部、日経ベンチャー編集(現・日経トップリーダー、日経BP)、出版局編集部次長兼日経文庫編集長などを経て、99年からフリーランス・ジャーナリスト。1989年に眼病を患い、視覚障害者(軽度の弱視)になる。その体験も踏まえて財団法人共用品推進機構に参加。99年4月〜2011年5月まで機関誌「インクル」編集長を務める。専門分野は高齢者・障害者ビジネス、中小・ベンチャー企業経営。昨年4月から日経ビジネスオンラインで「障害者が輝く組織が強い」を連載し、同11月に『障害者が輝く組織』(日本経済新聞出版社)として刊行。『R60マーケティング』(共著、日本経済新聞出版社)、『クリスマス・エクスプレスの頃』(共編著、日経BP企画)、『共用品白書』(共編著、ぎょうせい)など著編書多数。



このコラムについて

社会起業家の「障害者支援ビジネス」

 「障害者雇用」に新しい風が吹き始めている。「ダイバーシティ経営」の推進に積極的に取り組む大企業グループが牽引役となって、民間企業セクターにおける障害者雇用率はここ数年着実に改善し、障害者雇用促進法が定める法定雇用率1.8%(従業員56人以上の企業の場合)の達成も視界に入ってきた。
 そうした中で今、20〜30歳代の若い社会起業家(ソーシャルアントレプレナー)たちが「障害者支援ビジネス」と呼ぶべき新たなソフトサービス分野を切り開きつつある。障害者の雇用拡大や就労支援を「ビジネススキーム」の中で実現しようというニューパワーだ。「社会を変えたい」「世の中の役に立ちたい」「誰かを支えたい」――。彼らがビジネスモデルの根幹においているのは「つながり」や「絆」。そこには、東日本大震災後の若い世代の新しい価値観・行動規範が映し出されているようにも見える。
 2010年の連載『障害者が輝く組織が強い』に続き、産業界における障害者雇用の最前線の動向をルポする。

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