「世界を読む 指標100」

産業空洞化、財政不安増幅も

急増する日本の対外直接投資

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2012年1月20日(金)

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 2011年は急速な円高に伴って、製造業を中心に日本企業が生産拠点を海外に移す動きが目立った。いわゆる「産業の空洞化」だ。個人的には、今年も円高基調が続き、1ドル=70円を目指す展開もありうると見ている。今年は空洞化がさらに加速するのか、それとも一服するのかに注目している。

 空洞化の進行を見極める上で重要な指標となるのが、財務省が公表する国際収支統計にある「対外直接投資」だ。グラフは、月次の対外直接投資額のうち国内から国外への流出額を年換算して算出した。1990年代後半から対外直接投資は増加トレンドを辿り、2008〜2009年には20兆円を超えたが、その後はリーマンショックを発端とする世界経済の減速で急減した。

対外直接投資、過去のトレンドを上回る

 しかし、2010年には底を打ち、現在は急ピッチで回復する途上にある。新興国などに工場を新設するための投資だけでなく、海外企業のM&A(合併・買収)も活発だ。武田薬品工業が約1兆円でスイスの同業、ナイコメッドを買収するなど、日本企業による海外企業のM&Aは過去最高だった。

 そして、グラフに図示したように、2011年11月には直接投資は過去の増加トレンドをも上回った。日本企業による海外投資が中長期的にみても加速し始めたことを示唆している。

 空洞化の見極めでは、内閣府が毎月発表する「機械受注統計」も参考になる。このうち、国内の設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」は、昨年9、10月が前月比マイナスとなった。11月は3カ月ぶりにプラスに転じたものの、今後、この数値が頭打ちないし下降トレンドが鮮明になると要注意だ。目下、東日本大震災の被災地の復興に必要な建設機械の受注などが盛り上がっていることを考えると、思いのほか速いペースで生産の海外移管が進んでいる可能性がある。

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著者プロフィール

安達 誠司(あだち・せいじ)
ドイツ証券シニアエコノミスト

安達 誠司1965年生まれ。1989年東京大学経済学部卒、大和総研等を経て、現職。
専門はマクロ経済。主な著書に「デフレは終わるのか」、「恐慌脱出」(いずれも東洋経済新報社)などがある



このコラムについて

世界を読む 指標100

急速に変化する情勢を読み解くには、どんな指標に注目すべきなのか。日経ビジネス編集部では、著名エコノミストやトップアナリスト74人に、世界と日本の明日を見通すために注目される指標100を選んでもらった。その指標の見方を解説していく。

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