株式市場の関係者にとって、寒さがことのほか身にしみる新年となっている。昨年12月30日、大納会の日経平均株価は大納会として3年ぶりに上昇して終え、相場関係者は2012年へのかすかな希望を抱いたが、現実は厳しい。年明け以降、日経平均は上値が重い展開が続く。
売買代金1兆円割れが1ヶ月続く
株式市場の寒さを端的に表すのが、相場のエネルギーを示す売買代金だ。東京証券取引所第1部ではかつて、1日3兆円が活況の目安とされたが、1月12日まで1兆円にも届かない日が1カ月続いた。欧州の財政問題や円高といったマクロ経済の不安要因を考えると、無理もない。しかし、買い向かうことをためらう投資家を勇気づける“材料”がないわけではない。
その1つを提供したのが、衣料品専門店「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング。1月5日、昨年12月の国内ユニクロ事業の既存店売上高が前年同月比で14%増えたと発表した。既存店売上高の増加が5ヶ月ぶりだっただけでなく、その増加率も約2年振りの高さとなったことを市場は好感。ファストリ株は商いを伴って上昇に弾みをつけ、13日には1万4780円と昨年8月の昨年来高値(1万5080円)にあと一歩まで迫った。
12月の販売好調の背景には、気温が低めで高単価の軽量ダウン「ウルトラライトダウン」などを買い求める客が増えたことがあった。この秋冬商戦で、ファストリは主力とする「ウルトラライトダウン」などに商品数を絞り込んで臨んだが、寒波襲来で防寒のための実需買いが膨らみ、在庫をたっぷり用意したこれらの主力商品を大量にさばけたのだ。SMBCフレンド調査センターの田中俊・主任研究員は「商品を絞り込んだ効果で在庫処分損が減り、粗利益も押し上げた」と見ている。
もっとも、ファストリの戦略が秋冬シーズンを通じて成功しているかと言えば、そうではない。昨年9〜11月は気温が高めだったことで、消費者の目は防寒のための実需よりファッション性に向かい、逆に不振だった。
極端な話、売り上げはお天気頼み。1月は今のところ寒さが続いており期待が持てそうだが、そもそもマインドが萎縮しきっている投資家が、なぜ12月単月の既存店売上高の数字だけでファストリ株を買い求めるのか。
投資家、連結業績より海外収益に注目
それは、投資家に別の期待を抱かせるイベントが翌週12日に控えていたからだ。2011年9〜11月期の連結決算の発表だ。“サプライズ”となった12月の国内売り上げがきっかけとなって投資家の目は改めてファストリ株に集まり、月次データが非開示のため決算で初めて分かる海外収益への期待が膨らんだというわけだ。
結論から言うと、同期間の連結営業利益は3%減の484億円と振るわず、同時に2012年8月期通期の連結業績予想も下方修正。営業利益は50億円引き下げ、前期比12%増の1305億円とした。だが、国内の不振が主因で多くの投資家は織り込み済みだった。
一方、注目の海外ユニクロ事業。9〜11月期の部門業績は売上高が59%増の426億円、営業利益は13%増の54億円だった。期中に米ニューヨークの5番街に、韓国ソウルや台北の中心部にも旗艦店を開業した。先行投資が重く、利益の伸びが売上高に見劣りするが、それでも発表翌日の株価が1.7%上がったことを見ると、投資家はおおむね及第点を与えたのだろう。
同社グループ執行役員の岡崎健CFO(最高財務責任者)によると、海外ユニクロ事業ではアジアが売り上げの7割、利益の大半を稼ぐ。アナリストからも「アジアではユニクロの知名度が急速に高まっており、出店すれば収益がすぐについてくるようになったことは評価できる」との声が多い。知名度がまだ物足りない欧米の攻略は今後の課題だが、少なくとも、成長市場であるアジアでは一定の足場を築きつつあることは大きな前進だ。
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