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伊藤博文の悔恨と残された時限爆弾

明治国家の確立と時限爆弾(後編)

  • 村井 哲也

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2012年2月1日(水)

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天皇大権と首相権力の曖昧な関係

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 憲法は意思決定システムの根幹である。だが、それは生き物の如く変化していくが故にバリエーションは多様となる。それを理解せず、意思決定システムが行き詰ると何かと改憲を打ち出す向きは多い。首相公選論や参議院強化論がこれにあたるが、その実現可能性は低く、政治的な牽制以上の意味は持ちにくい。

 もちろん、オルタナティブが万策尽きれば改憲した方が良いだろう。ただし、意思決定システムは制定者の狙い通りには生きてくれない。それを肝に銘じるべきである。

 明治憲法を制定した伊藤は、その後の育成プランまで立てていた。様々な政治勢力に試みた説得と妥協によって、条項に様々な曖昧さと矛盾が残されていたからである。自分こそが、明治憲法を漸進的に育て上げなければならない。この強烈な自負心によって、明治憲法には生命力が吹き込まれた。だが、伊藤は次第に、曖昧さと矛盾が時限爆弾のごとく膨れ上がっていくことに焦りを募らせていく。まず、天皇大権と首相権力に曖昧な関係をもたらしていたのは、第1条と第4条の齟齬である。

 第1条 大日本帝国ハ萬世一系ノ天皇之ヲ統治ス

 第4条 天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総覧シ此ノ憲法ノ條規ニ依リ之ヲ行フ

 第1条は「天皇大権主義(絶対君主)」に、第4条は「政党内閣主義(立憲君主)」につながる。両者の齟齬は、太平洋戦争開戦をめぐる東京裁判にも暗い影を落とした。前者の見解なら、天皇の戦争責任は微妙となる。結局、後者の見解が採用され、「権力」責任は首相の東条英機とされて天皇は免責された。

 しかし伊藤は、一見第1条と親和的に見える条項で、巧妙に天皇の免責を図っている。第3条の「天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス」だ。天皇は絶対的な存在という意味で「侵スヘカラス」としたのでなく、ここに法律・政治上の「権力」責任を不問にする意味を込めたのだった。何より伊藤は、藩閥グループが結束して築いた信頼関係によって、天皇の位置づけを全く問題とさせなかった。問題はむしろ、他の条項にあった。

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