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「障害者支援」を支援する仕組みを作れ

眞保智子・高崎健康福祉大学准教授、牧里毎治・関西学院大学教授に聞く

  • 高嶋 健夫

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2012年2月2日(木)

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 本連載では8回にわたって、企業社会における障害者雇用・就労支援の最前線の動向を、若い社会起業家が展開する新しい支援スキームの台頭という視点からルポしてきた。これまで企業社会があまり注目してこなかった障害者福祉の領域に、ビジネス流の経営ノウハウや専門的な職業スキルを持ち込み、持続可能なビジネスモデルの構築を目指す。そんな従来にはない新しいタイプの「障害者支援ビジネス」が生まれつつある。

 大企業をスピンオフしてソーシャルベンチャーを立ち上げる社会起業家もいれば、既存の会社組織の中で障害者向けビジネスの展開や社会貢献活動に挑む社内起業家もいる。支援の形も多種多様。働く場所の限られている、障害のある人たちに対して、自社での雇用拡大を図る、就職活動や社会復帰を支援するサービスを提供する、あるいは地域の小規模福祉作業所の販売活動を支援する――それぞれのビジネス領域や専門性に合わせて、“等身大”の支援スキームを模索している。

 背景にあるのは、“失われた20年”の中で育った若い世代の間に広がる「社会とのつながり・絆」への希求と社会変革への強い使命感だ。社会が抱える問題を「自らが解決しなければならない課題」と捉え、「世の中の役に立つ仕事がしたい」「ビジネスを通じて社会に貢献したい」と考える若いビジネスパーソンが行動を起こし始めたのだ。それは静かだが、着実に広がりつつあるメガトレンドであり、閉塞感漂う日本の企業社会と企業文化に新しい価値創造の道を開くポテンシャルを秘めている、と言っても過言でない。

 本連載の最終回では、こうした社会起業家による障害者支援ビジネスの現状と課題をどう見るか、2人の専門家にインタビューした。1人は、経済学の立場から企業の障害者雇用の取り組みを研究している眞保智子・高崎健康福祉大学准教授。もう1人は、わが国初の「社会起業学科」を開設した関西学院大学の牧里毎治教授。

 眞保准教授は障害者雇用の現状について「CSR(企業の社会的責任)やコンプライアンス(法令遵守)への社会的関心の高まりとジョブコーチなど支援制度の充実が、障害者の就労機会の拡大に貢献している」としたうえで、企業が障害者雇用で成功するためには「比較優位の考え方に立脚し、働く障害者の得意分野と企業ニーズをマッチングさせる取り組みが強く求められる」と指摘する。

 一方の牧里教授は「障害者支援は困難だが、切り開かなければならない社会起業の重要分野」と位置付け、「教育プログラムの充実、経営ノウハウを共有する仕組み作り、ファイナンス面での支援策の構築」の必要性を強調する。とくに「創業資金を提供する“リターンを求めない投資ファンド”といった、新たな発想による資金供給スキームの創設」を提言している。

【障害者雇用の現状】特例子会社が雇用増をけん引

 まず、眞保智子・高崎健康福祉大学准教授に民間企業セクターにおける障害者の雇用・就労状況について見解を聞いた。

 厚生労働省が昨年11月末に発表した「平成23年度障害者雇用状況の集計結果」によると、2011年6月1日現在、民間企業(障害者雇用促進法による法定雇用率1.8%を義務付けられた従業員56人以上の企業)全体の雇用率は1.65%、法定雇用率達成企業の割合は45.3%となっている。企業に雇用されている障害者数は36万6199人で、過去最高となった。

 雇用率、達成企業割合はいずれも2010年度実績(1.68%、47.0%)を下回っているが、これは短時間労働者の算入、障害者雇用が困難な業種への除外率の引き下げなど積算ベースを厳しくする制度運用改正が実施されたためで、厚生労働省では「仮に11年度の雇用率を10年度までの旧基準で積算すると約1.75%になる」としている。

眞保 智子(しんぼ・さとこ)氏
高崎健康福祉大学健康福祉学部医療情報学科准教授。法政大学大学院社会科学研究科経営学専攻修士課程修了。精神保健福祉士。群馬女子短期大学非常勤講師(1997~2000年)、高崎健康福祉大学短期大学情報文化学科専任講師(2001~06年)を経て、2007年より現職。日本リハビリテーション学会運営理事。主な研究分野は障害者雇用、若年者就労支援とキャリアデザイン、職業リハビリテーション、休職者の職場復帰に関する支援プログラムの開発など。

―― 2000年代に入って以降、民間企業の障害者雇用は着実に進んでいます。2011年も東日本大震災、歴史的な超円高など厳しい経営環境の中で改善基調は続いているようですね。

眞保:制度改正が行われたので単純比較はできませんが、全体の傾向としては11年度の雇用状況も前年までの改善傾向が引き続き維持されていると見て間違いありません。

 障害者雇用の伸びを牽引しているのは大企業です。規模別で見ると、従業員1000人以上の大企業では法定雇用率を上回っています。これに対して、同100人以下の中小企業ではここ10年ほど低下傾向が続いており、二極化が進んでいると言えます。

―― 大企業で障害者雇用が進んでいる要因として、どんな点が指摘できるとお考えですか。

眞保:やはり、CSR(企業の社会的責任)やコンプライアンス(法令遵守)などへの社会的関心の高まりが背景にあります。私も関わった高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センターの「企業経営に与える障害者雇用の効果等に関する研究(2010年度)」によると、具体的な効果としてCSRの遂行、法令遵守、障害者雇用納付金の支払いの軽減・解消などを挙げる企業が多い。女性、高齢者、若者、障害者といった社会的弱者の雇用拡大を求めるダイバーシティ経営実現への社会の要請が、積極的に障害者雇用に取り組む企業行動を後押ししていると言えるでしょう。

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