前回、設置コスト29万円/kW(発電コスト換算で19円/kWh)という驚異的な低価格による太陽光発電システムについて紹介した。これを実現したのは、フジワラ(千葉県船橋市)とエイタイジャパン(千葉県鎌ケ谷市)を中心としたグループ(以下、フジワラ/エイタイ)である。この記事に対する反響は非常に大きく、フジワラ/エイタイには全国から照会が殺到している。彼らがやろうとしていることは格安太陽光発電の急速な普及だが、同時に日本の古い商習慣を打ち破る可能性を持つ大いなる挑戦でもある。
メーカー主導の限界
新しい製品や技術の普及のためには何か起爆剤が必要である。太陽光発電について言えば、これまで、普及の最大のネックが高コストであったことを考えると、圧倒的な低コスト化こそが最大の起爆剤になるはずだ。
インターネット上でも「激安」をうたうサイトが増えてきたことは心強い。しかし、調べてみると、安いものでもだいたい47万円/kW、発電コストに換算すると32円/kWh程度である。2010年の設置コスト平均が61万円/kW、2011年後半でも53万円程度だったから、確かに平均よりかなり安いことは間違いないが、起爆剤としてはまだまだ不足だ。
メーカー主導で、従来型の代理店方式の販売ルートを使っていてはこの程度が限界である。代理店とは、メーカーの代理であり、消費者の利益を代表するものではない。メーカー主導による、売る側の論理が支配する20世紀型のビジネスモデルの行き詰りである。
となれば、これまでの古いビジネスモデル(商習慣)を創造的に破壊することが必要だ。それに挑戦するのが、フジワラ/エイタイである。フジワラの本業は宅地造成工事など。エイタイジャパンは中国深圳にある工場でTUV(ドイツの規格団体)認証取得済みのパネルを製作しているメーカーと取引をしている。
ユーザー直結のビジネスモデル
日本の産業の悪い方の特徴の1つとして、流通経路が長いこと(多層構造)が挙げられる。典型例は建設、土木の分野で、元請け、下請け、孫請け、(さらに場合によってはひ孫請け)という垂直重層構造になっている。ほとんどの場合、本当に仕事をしているのは最底辺の孫請け(あるいはひ孫請け)だけであるにも関わらず、上流側のそれぞれの層で口銭などの経費が発生するので、全体として高コスト体質になっている。
この業界に詳しくない人は、コーヒーショップの例を考えると分りやすい。ウエートレスがいる店は1杯500円以上と高く、セルフ店は150〜300円と安い。ここで、ウエートレスが多層構造になっていたらどうだろうか。元請けウエートレスは単にコーヒーを下請けウエートレスに渡すだけ。次に下請けウエートレスが1m運び、最後に孫請けウエートレスが残り4mを運び客に出す。こんなことをやっていたら、コーヒー1杯が2000円ぐらいになってしまう。
同様の問題が、かつては消費財の流通にも見られた。メーカーから消費者に届くまでに一次、二次、三次問屋といった多くの卸店が存在し、最後に小売店に到達する。
筆者は、1980年代後半に経営コンサルタントとして、消費財の流通改革に取り組んだことがある。一言で言えば、実際に小売店に納入している(本当の仕事をしている)二次問屋(場合によっては三次問屋)を地域限定の代理店に格上げし、単なる仲介役として、口銭を取っているだけの一次問屋(場合によっては二次も)を排除した。これが、「中抜き」の考え方である。現在では卸問屋を全く通すことなく、メーカーから小売までの直接取引も珍しくなくなった。
流通の上流側を排除し、下流側の三次問屋や孫請けを活用することは、ピラミッド型から「文鎮」型へのビジネス構造の転換である。それはまた、従属的な垂直構造から対等な水平分業へのシフトでもある。この改革により、末端で実際に仕事をする人が報われる仕組みを作っていける。しかも、それは、地方経済の活性化にもつながるものだ。そして、このやり方は、太陽光発電ビジネスにも応用できるのである。
太陽光発電システムの場合には、メーカーが製造したパネルがまず商社を経由して問屋に卸された後、代理店などに入る。さらに工事店を経由してユーザーの元へ届く。これを中抜きする。フジワラ/エイタイが一種のシステムインテグレーター(SI)となり、メーカーから直接仕入れたパネルや機器類を、格安の価格で工事店に販売する体制を確立しつつある。

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東京大学総長室アドバイザー。1974年東京大学大学院工学系研究科修了。1979年米スタンフォード大学経営大学院修了、MBA取得。米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニー、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン(日本代表)を経て、1995〜2000年にゴールドマン・サックス証券(バイス・プレジデント)。その後、モニター・カンパニー日本代表、コラボ・テクノロジー取締役などを経て、2005年から東京大学サステイナビリティ学連携研究機構特任教授として、サステイナビリティ(持続可能性)研究グループに所属し、地球温暖化対策を担当した。2010年4月から現職。


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