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日本からの国際規格の提案はなぜ実現しないのか

国際舞台に日本が復活する方法 (前編)

2012年2月7日(火)

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 前回は、各国が自国産業の国際競争力強化を目指して戦略的に世界のリーダーポジションを次々と奪い合っている状況について、ISO(国際標準化機構)に着目して実態を述べた。欧米だけでなく、中国をはじめアジア各国も着々と成果を上げつつある。一方、日本だけが取り残されている。

「社会インフラ輸出」の国際主導、いまだ実現せず

 事実を確認してみよう。

 ISOで日本が最も近年に幹事国となったTC(専門委員会)は、TC244「工業炉およびそれに関連する熱プロセス設備」である。これは2008年に設立された。その活動スコープは「工業炉及びそれに関連する熱プロセス設備の標準化であり、具体的な対象設備範囲は、加熱炉、熱処理炉、溶解炉などに代表される工業炉、オーブン、ガラスの熱処理炉、乾燥炉及びバーナ等の加熱装置、加熱制御装置」となっている。

 その1つ前はと言うと、TC227「ばね」であり、その活動内容は「金属ばね単体を対象とし製品許容差、用語、検査試験方法及び加工技術(熱処理、表面処理、ショットピーニング等)の標準化を進める」とある。設立はさらに昔に遡る(2004年)。

 工業炉もばねも日本の産業にとって重要であることは間違いない。しかし、前回ご紹介したような、巨大ビジネスを丸ごと国際標準規格にして国際調達を活性化しようというような取り組みとは異なる次元である。世界第2位の経済大国の座を明け渡し、急速に国際的な影響力を失っていっている日本の現状を打開するための切り札として、この2つの委員会の成果に過度の期待をしては申し訳ないだろう。

 一方で、日本にやる気がなかったわけではない。ここ数年間、日本のV字回復を目指すためのスローガンとも言える「社会インフラ輸出」に直接かかわるいくつもの国際標準化提案の検討が、官民を挙げてなされてきた。それなのに、なぜ1つも実現していないのか?それほど国際提案を通すことはむずかしいのか? 今回はまずその真の理由を考察したい。

ボトムアップが問題だった

 ISOのルールに則った国際提案そのものが難しいのではないかと思う方もいると思うが、実は、国際提案を実施することの技術的なハードルはそれほど高くはないということを申し上げたい。たかだか10ページ程度の提案書を作成すればよいだけである。新規委員会の提案書は「TSP」、新規規格の提案書は「NWIP」と呼ばれる。書式は単純で、国際投票で可決された提案書を見ても、そのボリュームは拍子抜けするほど少ないし、巧妙に書かれた文書というわけでもない。提出された提案書は国際投票にかかるが、ほとんど可決されおり、否決されたケースの方が思い当たらないくらいである。

 問題なのは国内の進め方のほうだと思う。まず、日本における国際標準化活動についての国のルールがある。外国が国際標準化の新規専門委員会を提案し、国際投票で可決され、決議機関(例えば、ISOでは技術管理評議会)で承認されると新規の専門委員会がスタートする。すると、その国主導の国際委員会に対して日本国内で対応するため受け皿団体として「国内引受団体」を決めなければならない。多くは工業会、学会などの既存団体である(法人格が必要)。

 次にこの受け皿団体が幹事組織となり、有識者や関係者を集めて構成する国内審議委員会を編成する。この国内審議委員会において国際の場で発言するエキスパートを任命し、また日本としての意見を決定する。

 驚くなかれ、この日本政府の定める業務手順には、意外なことに日本が新たに国際提案をする際のルールが書かれていない。他国が提案し、それに対して日本が対応するためのルールしか規定していないのである。

コメント4件コメント/レビュー

国際規格に関わる人材育成をないがしろにしてきたツケは大きいが、今からでも遅くは無い。まずは日本の非戦略主義を改めるところから始めよう。(2012/02/07)

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「日本からの国際規格の提案はなぜ実現しないのか」の著者

市川 芳明

市川 芳明(いちかわ・よしあき)

日立製作所国際標準化推進室主管技師長

2000年、日立製作所環境ソリューションセンタ長などを経て、現職。IEC(国際電気標準会議)TC111議長、ISO TC 268/SC1議長、ISO TC207エキスパート。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

国際規格に関わる人材育成をないがしろにしてきたツケは大きいが、今からでも遅くは無い。まずは日本の非戦略主義を改めるところから始めよう。(2012/02/07)

世界をリードする国力、技術力を有するかどうかは、控えめで奥ゆかしいかどうかではなくて、その国の技術力が真に、世界から尊敬され、信頼されるかどうかでしょう。 中国やインドに追い越される程度の技術は既にそれだけのものであり、彼らに追いつけない技術を持つかどうかを論議すべきだし、追い越されたことの実力の低下をこそ憂えるべきです。(2012/02/07)

基準が定まって居ない物では、何処までやれば良いの?という自問をしつつ、案を上司の承認を得、経営会議の承認を得ます。しかし、審議する人は発案者よりも知見が有るわけでは無く、「他社動向は?」など他がやって居ない事をしようとすると苦労ばかり。そして、では基準を作ろうとすると、「どこから給料貰っているんだ」という、近視眼的発言で更に苦労してしまいます。無駄なコスト削減は大事な事、しかし、結果がすぐには出ない事もやらせてみる、という経営や上司の姿勢が日本を元気にさせると思います。国益を考えろとは言いませんが、日本を元気にさせる、という位のスタンスでアイデアを応援して欲しい物ですね。(2012/02/07)

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