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発・送・配電は大規模統合し、小売りサービス競争を促進

安定供給を確実にするための電力改革案

2012年2月10日(金)

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 2011年12月27日、枝野経済産業大臣が「電力システム改革タスクフォース論点整理」を公表した。この論点整理をもとに、これから電力システム改革の議論が本格化する。

 本稿では、そうした議論に一石を投じるために、筆者の考え方に基づいて具体的な電力システム改革の方向性と電力産業再編案を提示したい。発送電分離論や自由化問題に対して一定の回答を示しつつ、論点整理に含まれていない原子力発電の取り扱いも加えて、具体的な構想を述べる。

電力会社は大規模化する方が合理的

 日本の電力システムは、(1)安定供給に必要十分な一定のゆとり(冗長性)を持った設備の確保、(2)国際エネルギー市場で伍していける購買力の形成、(3)電源の多様化によるリスク分散、の3つの条件を満たす必要がある。

 (1)の安定供給のための予備力については、市場の価格シグナルに委ねるだけでは、必ずしも必要な設備投資がなされない。そもそも安定供給のために必要な予備的設備は、厳しい競争下では「余剰」設備になるからだ。米国や欧州のような自由化先行国でも、発送電の設備形成不足が解消せず、市場メカニズムを補完するさまざまな方策が検討されている。

 (2)の燃料輸入についての問題は深刻だ。化石燃料については、基本的には独占企業体や資源国政府との交渉で利権を確保してく必要がある。国内の発電市場での競争だけを考えれば、プレイヤーが多いほど良いということになるが、その分対外的には小さな購買主体が独占体を相手に調達交渉を挑むことになる。双方独占的な交渉ができなければ、結局大きな国富が流出してしまうだろう。

 (3)についても、国内市場の競争が厳しければ、どの事業者も、燃料の多様化が重要と頭では理解していても、短期的に有利な電源(英国のケースではガス火力)の建設に走ってしまうだろう。国全体としてのエネルギー安全保障の確保・リスク分散は果たせなくなる。また、民営による原子力発電や核燃料サイクル事業を維持するのであれば、運営主体である民間電力会社は財務的に盤石な体制を確保し、安全対策費用や保険料はもちろんのこと、賠償リスクも民間分担分を負える体力を持たなければならない。

 以上のような理由から、筆者は、日本の電力会社は発送電分離を進めて小さな主体に分割するよりも、むしろ大規模化を目指す方が合理的だと考えている。これは、発電分野の新規参入を促して電気料金低減を目指す競争政策とは逆の方向である。しかし、現状のような供給力が不足している状況の下で自由化を進めれば、料金はむしろ上昇するのは自明の理である。政治的に料金を上げないように抑制している現在の政府の対応は、「自由化を進める」という自らの政策そのものに矛盾している。

家庭ユーザーが求めるは料金メニューの多様化

 今後の電力システムにおいてどんな競争が期待されているのか。確かに、既に自由化されている大口ユーザーの間では、電気の価格と質が重要な要素となるため、発送電分離も一つの回答かもしれない。しかし、原発事故を契機に電力システムについて関心を持ち始めたユーザーは、家庭を中心とする小口ユーザーだ。彼らは、単なる安さだけではなく、むしろ料金メニューや購入する電源について「多様な選択肢が提供されること」を望んでいるというのが筆者の実感だ。一言でいえば、今後は発電分野の競争に重点を置くよりも、ユーザーへのサービスを巡る競争を促進する政策に焦点を当てていくべきなのである。

コメント9件コメント/レビュー

エネルギーをガスで供給すればいいのです。大都市圏では、パイプラインは整備されています。地方では、ボンベ、バルク供給網は既に完成しています。その輸送コストも既に現行制度の中で織り込み済みです。電力会社が、大量に消費している分を直接需要家に販売してしまえば、ガス価格を下げることも出来ます。勿論、工場事業場用の燃料電池+、タービン発電機というシステムも可能であり、その効率も60%を超えれば、超高性能火力と同じ性能を、全国の工場、事業場の中に実現できます。需要家が、必要な電力を自分で発電すれば、見かけ上の消費電力はゼロになります。そこまで行かなくても、系統の流通電力は激減します。そうすれば、系統の制御もきわめて簡単になります。 そのために、まず、系統への発電所の連携を完全自由化すべきです。その上で、発電原価に見合った価格で、販売会社が買い入れるシステムを構築すべきです。 技術的には全く問題ありません。系統を安定化させるシステムは、ワンボートコントローラーで可能であり、面倒な制御も完全に自動化できます。 今それを阻んでいるのは、「電力会社」という概念と、その組織を守るために、「電力会社の利益をどう確保するか」という命題だけが先行していることにあります。 ガスは、天然ガス、LPG、石炭ガス、バイオガス等ほぼ数百年分の可採量があります。しかも、効率アップによる縮減で、co2の発生も十分に抑えられます。燃料電池からの排ガスの液化回収なども簡単にできます。エコキュートの技術ですね。 電力という固定概念から、転換しませんか。(2012/02/10)

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「発・送・配電は大規模統合し、小売りサービス競争を促進」の著者

澤 昭裕

澤 昭裕(さわ・あきひろ)

国際環境経済研究所所長

1981年一橋大学卒業、通商産業省入省。1987年プリンストン大学にてMPA取得。資源エネルギー庁資源燃料部政策課長などを経て2004年8月から2008年7月まで東京大学先端科学技術研究センター教授。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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いただいたコメント

エネルギーをガスで供給すればいいのです。大都市圏では、パイプラインは整備されています。地方では、ボンベ、バルク供給網は既に完成しています。その輸送コストも既に現行制度の中で織り込み済みです。電力会社が、大量に消費している分を直接需要家に販売してしまえば、ガス価格を下げることも出来ます。勿論、工場事業場用の燃料電池+、タービン発電機というシステムも可能であり、その効率も60%を超えれば、超高性能火力と同じ性能を、全国の工場、事業場の中に実現できます。需要家が、必要な電力を自分で発電すれば、見かけ上の消費電力はゼロになります。そこまで行かなくても、系統の流通電力は激減します。そうすれば、系統の制御もきわめて簡単になります。 そのために、まず、系統への発電所の連携を完全自由化すべきです。その上で、発電原価に見合った価格で、販売会社が買い入れるシステムを構築すべきです。 技術的には全く問題ありません。系統を安定化させるシステムは、ワンボートコントローラーで可能であり、面倒な制御も完全に自動化できます。 今それを阻んでいるのは、「電力会社」という概念と、その組織を守るために、「電力会社の利益をどう確保するか」という命題だけが先行していることにあります。 ガスは、天然ガス、LPG、石炭ガス、バイオガス等ほぼ数百年分の可採量があります。しかも、効率アップによる縮減で、co2の発生も十分に抑えられます。燃料電池からの排ガスの液化回収なども簡単にできます。エコキュートの技術ですね。 電力という固定概念から、転換しませんか。(2012/02/10)

確かに、電力だけでエネルギーを賄おうとするとここで書かれているようなことになるのでしょうが。そもそも電気でなければならぬ理由は何ですか。 ガスではだめなのですか。 家庭用で見たときに、そのエネルギー構成の50%が電気で、残りの50%は、ガスや、石油と言われています。 ならば、燃料電池で、ガスを燃料にして電気を発電し、その廃熱で給湯、暖房などをまかなうと、ほぼ現状のガス使用量で、電気と熱が間に合ってしまう計算になります。 つまり現状のガスインフラで、発電電力を大幅に削減できます。分散電源で、しかも最新鋭火力を上回る高効率で、配電ロスもなくせて、エネルギー総量を減らすことが出来るのです。 系統連係の規制を大幅に緩和して、自家用発電の電力の系統連係を容易にして、発電原価に見合う価格で電力を買い取り、他の需要家に、線路利用料を上乗せして得るような構成にすれば、電力会社が独占して一元化する必要は全くなくなります。 続きます。(2012/02/10)

正論です。やっとまともな案が出てきました。一つ心配なのは、東日本卸電力が経産省役人の天下り作にならないことだけを願います。役人は時間の感覚が無いため、経営はできません。(2012/02/10)

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三品 和広 神戸大学教授