ブレジンスキー氏の近著が引き金
この社説は朝鮮日報の2月11日付「『中国を頼るか、日本と手を結ぶか』を問う米国と韓国政治」だ。同紙は韓国で最大部数を誇る保守系紙である。
「核の傘」が社説のテーマに選ばれたのは米大統領の国家安全保障担当補佐官を務めたブレジンスキー氏が最近、著書を出版したのがきっかけだ(注1)。この社説は同書の以下の部分を引用したうえで、韓国人に今、国の針路を決めねばならないと訴えた。
「米国の衰退は韓国に苦渋の選択を迫る。中国による東アジアの覇権を受け入れ中国にさらに接近するか、歴史的な反感にもかかわらず日本との関係をさらに強化するかの選択だ」、「日本や韓国は米国の核の傘を期待できなくなる。日韓両国は新たな核の傘を求めるか、自前の核武装を迫られる」。
平和ボケした呑気な日本人
この社説を日本人が読んだら、ほとんどの人が「韓国人は何を焦っているのだろう」と違和感を抱くに違いない。普通の日本人は「米国の衰えと中国の台頭は現実であるにしろ、米国の核の傘が消えることは当面ない」と信じこんでいるからだ。「オバマ大統領は2011年11月、豪州での『アジア重視』演説を通じ、中国の膨張を抑える決意を表明したではないか」と反論する人も多いだろう。
ただ、それは平和ボケした日本人の呑気すぎる発想かもしれない。「予算の徹底的な削減を目指し米国が兵力を相当数減らす以上、『アジア重視』は絵に描いた餅に終わる」、あるいは「重要なアジアでも抑止力を減らさざるを得ないからこそ、口先で『アジア重視』とブラフをかけた」という見方が安全保障専門家の間にはある。
また「『アジア重視』と言っても対象は南シナ海とインド洋。むしろ、中国の中距離ミサイルの射程に入っている北東アジアから米国は駐屯軍を減じるだろう。在沖縄の海兵隊のグアム移転がいい証拠だ」と考える専門家もいる。
「米国に捨てられる」韓国の恐怖
呑気すぎる日本人とは対照的にあまりに悲観的な韓国人――。韓国側にも特有の背景がある。まず、地政学的要因だ。社説はブレジンスキー氏が米中の覇権交代時期を20年後と見ていると紹介したうえで「中国と陸地や海でつながっている韓国は5年後、10年後には巨大化した中国の圧力を、軍事を含めあらゆる面で感じることになる」と予想した。
すでに韓国近海では中国の大漁船団が白昼堂々と不法操業している。拿捕に向かう韓国の海上警察の警備艇は大船団に囲まれ威嚇される毎日で、2人の海上警察官が中国の漁民に殺されている。何とか漁民を逮捕しても「中国人に手を出すとは生意気だ」とばかりに在北京韓国大使館が空気銃で撃たれる。
(注1)ブレジンスキー氏の近著の書名は以下の通り。
“ Strategic Vision: America and the Crisis of Global Power ”
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日本経済新聞社編集委員。

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