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孤独な「東條独裁」と戦後国家への遺産

敗戦への道と明治国家の終焉(後編)

  • 村井 哲也

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2012年2月22日(水)

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「総論賛成」と「各論反対」

 日本人は改革マニアだ。ここ20年近く、小沢一郎の「政治改革」、小泉純一郎の「構造改革」、政権交代を成し遂げた民主党と、常に日本政治は改革の季節にある。陸軍の「国家革新」も、近衛文麿の「新体制」も、橋下徹の「維新」も、ほぼ同義語だ。

 改革が必要なことに反対する者は滅多にいない。ただし、総論に限っての話だ。各論という具体的な過程に入れば、賛成する者は急速に減る。改革の中身を都合よく解釈した面々は、都合が悪いと察知するや潰しにかかる。だが、犠牲者を全く出さない改革など、この世に存在しない。現状に問題点があるのだから。

 前述した改革は、実はどれも、強力なleadershipを発揮するシステムの構築を目指すものであることに気づく。「選択と集中」をなす強力なleadershipの発揮は、犠牲者が出ない訳ない。だが、発揮すれば「独裁」のレッテルを貼られて潰される。かくて、「総論賛成」「各論反対」が続き、何も意思決定はなされない。

 東條英機は、史上初めて、未曾有の国家総力戦に直面した首相だ。「日本のアキレス腱」の海上輸送は断裂の危機に晒され、「物の予算」たる物資動員計画は希少なパイの争奪戦に陥る。全ての機関は、天皇大権への直結を大義名分に削減を許さない。

 「統帥大権」を過大視する向きは多い。だが、「ねじれ国会」の参議院のごとく抵抗野党の権勢だ。日本政治の得意技だが、政権与党になれば無責任にはなれない。「統帥大権」を振りかざした東條は、首相の責任と孤独を味わう。「東條独裁」は、こうして始まった。

 「始めたら徹底してやらねばならぬ」。日米開戦に反対した昭和天皇も支持した。日清・日露が開戦した後の明治天皇と同じ、臣下の決定に従う君主の振る舞いだ。誰より東條は、自分を敬愛し豊富な情報を届けてくれる。「傀儡」の君主ではないのだ。

 孤独を深める東條にしても、最終的な拠り所はそこしかない。精神的にも、権限的にもだ。天皇大権こそ、全ての国家権限を握る。他のどの機関もこれに接近したい。だったら、自分が最も接近すればよい。未曾有の国家総力戦を指揮する首相なのだから。

 意思決定システムが漂流から破綻へと向かうなか、「天皇大権主義」は不可避だった。要は、明治国家が誕生した時代に回帰せざるを得ないのだ。その動きのなかで、終焉は着々と近づいてくる。

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