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第5回 “悪夢”を二度と繰り返さないために

東北大学・津波工学研究室(5)

2012年3月8日(木)

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 今村さんの研究には、理学・サイエンス寄り(津波発生のメカニズム研究など)のものと、工学・エンジニアリング寄り(防潮堤・防波堤、さらに今回は都市での津波の挙動研究など)の、2つの分野がある。しかし、肩書きをひとつ選ぶとすると、津波工学者だという。

 そう聞いて、ふと思い出したのは、地球温暖化などについて論じる気候変動の研究者だ。津波工学も気候変動研究も、コンピュータシミュレーションを主な武器にしつつ、将来の防災を視野に入れている。なのに片方は、工学であり、片方は、むしろ、自分たちの軸足をサイエンス側に置こうとしているように見える。やはりリアルな被害が「今」、というか、常時、世界各地で起きている津波研究の方が、防災のためのエンジニアリングの方面を向きやすいのであろう。

 今村さんは、今回の津波をまさに「悪夢」と述べたけれど、しかし、これまでの津波工学の研究成果を反映させた防災対策が、完全にとはいわずとも、被害を低減したことも間違いない。

 「防潮堤はすごく破壊されてしまったわけですが、あれはあれで、津波を弱めてくれたり、到達を遅くしてくれる効果はあったんです。頑丈なものを壊すことで、エネルギーを消費しますし、全く無意味ではなかったと思っています。津波のエネルギーを100と考えれば10か20くらい、力を弱めた、と。ただ、地元の人としてみたら、やっぱり期待は大きいわけですよ。全部防ぎきってくれるのではないか、と」

 また、今村さんたち津波工学者が、自治体に提言したり、自ら足を運んで地道に行ってきた防災の啓蒙活動で伝えたことを、忠実に守って、難を逃れた人たちもたくさんいる。ハード、ソフトの両面について、津波工学、津波の防災の研究者はかかわってきたし、実際にその成果はあった。

 しかし、あまりに甚大な被害状況に、その成功要素がいかに重要でも霞んでしまう。「すべてを防ぎきる」というのは、常に人智を超える自然相手に不可能であるとしても、今回明らかになった知見はすぐにでも、新たな津波対策に織り込まれていくべきだろう。この地球上では、それこそのべつまくなしに、被害が出る規模の津波が起きているし、ましてや日本でも、東海地震をはじめとする南海トラフの地震群など、東北沖以外にもリスクを抱えた地域は多い。

 それでは、今後、どうしていけばいいのか。

 今村さんは語る。

 「2段階あると思うんですよね。で、1段階目は科学的なもので、地球46億年の歴史の中で、非常に長いサイクルでいろんな現象が起きると。そういうことを例えば津波堆積物とか、液状化の跡とか、いろんなもので間接的に知っておくと。様々な天変地異を、理解しておくと。これが一つです」

 つまり、科学的な意味での様々な自然現象の理解が基礎としてある、と。

 「もう一つは、もっと具体的に、例えば地震津波が来るとして、コンピュータシミュレーションを使って、自分の集落のところに、どの方向から、何分くらいで、どれくらいの力のものが来るか。従来でいうハザードマップよりももっと高度なんですけど、そういったものを参照して、臨機応変な対応を考えると。こっちで地震が起きたらこういう津波が来るし、こっちへ来たらまた違う方向から津波が来る、といったことも理解していただく必要があると思います」

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「第5回 “悪夢”を二度と繰り返さないために」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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