「ポストFUKUSHIMAの経営論」

“チッソ化”で泥沼化する東電処理

  • 安西 巧

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2012年3月7日(水)

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 3月末をメドに原子力損害賠償支援機構と東京電力が策定する「総合特別事業計画」。1兆円の血税投入と引き換えに国が東電の経営権を取得するかどうかが最大の焦点になっているが、勝俣恒久会長はじめ東電首脳陣の抵抗はなかなかに執拗。「カネは出させるが口は出すなという理屈はありえない」と3分の2超の議決権を差し出すよう迫る所管大臣の枝野幸男経済産業相に対し、勝俣会長は「3分の1超が最低条件」と譲らない。

 常識的には、破綻に瀕して救済される側の東電の経営者に発言権はないはずだが、「東電支配へ根比べ 譲らぬ経産相・東電は抵抗 議決権巡り火花」(2月14日付朝日新聞朝刊)といった見出しが新聞紙上でにぎわう摩訶不思議。さらに、ここに来て東電には望外の援軍が浮上してきた。「官庁の中の官庁」を自他ともに認める財務省が東電国有化に難色を示しているのだ。

東電国有化阻止の“発信源”

 霞ヶ関の「金庫番」である財務省の主張は“いかにも”の感がある。経産相の思惑通りに経営権を国が握った場合、いまや数十兆円規模にも膨らむと予想される福島第1原子力発電所事故の損害賠償や廃炉、除染費用などの負担責任を抱え込んでしまうと財務省は懸念している。安住淳財務相は表向き「国民負担などを分かりやすく示したうえで最終的結論を出していかねばならない」(2月14日の閣議後の記者会見)などと毒にも薬にもならない発言に終始しているが、閣僚会議など非公開の席では「増税論議の最中に東電の燃料費まで税金をアテにするのか」と的外れな国有化反対論を唱えているらしい。

 その安住財務相だけでなく、野田佳彦首相までも意中のままに動かすといわれるのが勝栄二郎財務事務次官。財務省による国有化阻止の発信源はこの人物である。国の議決権の比率を最大でも49%以下に抑えるように、との指示が特別事業計画を策定する支援機構の関係者に伝わってくるという。

 東電の株式時価総額は2月末現在3615億円で、これに対し国(形式上は支援機構)が出資するのは1兆円。時価総額の約2.8倍の資金を受け取りながら、種類株(優先株など)を駆使してその本来の価値(つまり議決権)を半分に満たない程度に抑え込もうということのようだ。

 3615億円の49%は1771億円だから、1兆円からのディスカウント率は約82%。市場の論理からみれば、とんでもない数字だが、もとより前身の大蔵省の時代から、この役所にはマーケットの理屈は通じない。勝次官を国有化阻止へと動かしたのが東電の勝俣会長とされ、霞ヶ関や永田町界隈では「“勝―勝ライン”という最強の布陣には、さすが枝野さんもかなわない」といった事情通の解説が飛び交っている。

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