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「TPPで韓国の二の舞になる」は本当か

レッスン1 ISD条項で韓国は被害を受けない

2012年3月8日(木)

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 豪州でTPP(環太平洋経済連携協定)参加国交渉が開かれている。日本の交渉参加を巡る意見も参加国の間で熱を帯びてきた。交渉参加のための協議、参加する場合にはその後の交渉本番と、日本にはこの先、厳しい舞台が待ち受ける。TPPの正しい理解に必要な論点を韓米FTAに学ぶ。

 3月15日に発効する韓米FTAについて、不平等条約であるといった主張を日本で目にするようになりました。韓国では2006年にマスコミで反韓米FTAキャンペーンがはられました。例を挙げると、「韓米FTAによってカナダは深刻な社会・経済問題に直面した。韓米FTAを結べば韓国も同じ道を歩む」といった内容の報道がなされ、反韓米FTAキャンペーンは少なからず世論に影響を与えました。これに対して政府も積極的な反論や広報を行ったため、2007年に韓米FTAに肯定的な意見が否定的な意見を上回るようになりました。(※1)

(※1)詳しくは「農業被害はきっちり補償、世論対応は完璧だったFTA対策」(知られざる韓国経済2010年12月20日)を参照のこと。

 当時の日本には、韓米FTAについて興味を示す人は、ほとんどいませんでしたが、最近になって韓米FTAへの関心が急速に高まっています。そして内容を見ると、「韓米FTAは韓国に著しく不利な不平等条約」、「韓米FTAによって韓国経済・社会は深刻なダメージを受ける」といった、韓米FTAの負の側面を強調するものが多くなっています。

 検索サイトで「韓米FTA」、「不平等条約」のキーワードを入れると、読み切れないほど結果が出てきますし、韓米FTAは不平等条約であるとした主張が記されている書籍や雑誌も少なくありません。なぜ日本でこのような主張が広まっているかと言えば、TPPに反対する根拠の一つとして、「韓米FTAで韓国が打撃を受ける」→「日本がTPPに参加すれば韓国の二の舞になる」といったロジックが使われているからです。

韓米FTAは不平等条約か?

 では本当に韓米FTAは不平等条約であり、発効後に韓国は著しい不利益を受けるのでしょうか。結論から言えばこの主張は誤りです。TPPの参加是非については、そのメリットとデメリットをきちんと議論したうえで、最終的にはどちらに重きを置くのか国民が判断すべきです。そのためには、「韓米FTAにより韓国は大打撃を受ける」といった誤った情報はきちんと修正し、メリットやデメリットに関する正しい情報が提供されることが重要でしょう。

 韓米FTAの問題点として日本で広まっているものには幾つかあります。そこで4回に分けて、(1)ISD条項が不平等、(2)農業が壊滅、(3)公的サービスの運用が制約(公共料金が高騰する等も含む)、(4)その他の問題として主張されている点について、本当にこれらは問題なのか検討していきます。

 ちなみに日本で広まっている問題点の大半は、韓国のマスコミが反韓米FTAキャンペーンの一環として報道した問題です。韓国政府は、これら報道に対して反論ペーパーを作成して公開しています。これをまとめた資料(600ページを超えます)も外交通商部のホームページで公開されています。

 今回のシリーズでは、日本に伝わっている問題点(=韓国のマスコミによる報道)に対する韓国政府の反論を中心に紹介します。なぜなら韓国政府の反論に対する説得的な再反論がそれほど多くないからです。しかし韓国政府の反論に対する建設的な反論(政府の反論に聞く耳を持たず平行線をたどっているものは除きます)もありますので、これも紹介します。韓米FTAに対する一方的な批判だけでなく、韓国政府の反論、またそれに対する再反論を知ることで、韓米FTAの正しい姿が見えてきます。

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「「TPPで韓国の二の舞になる」は本当か」の著者

高安 雄一

高安 雄一(たかやす・ゆういち)

大東文化大学経済学部教授

1990年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、調査局、外務省、国民生活局、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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