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インカ帝国は「不死の国」だった!

国立科学博物館・人類史研究グループ(2)

2012年3月19日(月)

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 2002年に逝去した、SF作家R・A・ラファティの傑作に『九百人のお祖母さん』(ハヤカワ文庫SF)という作品がある。インカのミイラの話を聞いて、ふと思い出した。

 ある惑星に住んでいる宇宙人が「死なない」という特質を持っており、つまり、先祖がみな生きている。次第に動かなくなり、小さくなっていくものの、常に「現役」にとって、無視できない存在であり続ける。自分の家の中に900人の先祖が、生きて存在し続けていると考えてみてほしい。何か違う世界が垣間見えるような気がしないだろうか。

 インカ帝国の王も、死後、ミイラとして生き続けた。「死後の生」を目に見える形で演じ、「現役」の王にも、一般の人々にも強い存在感を示していた。死後も領地を保持し、家来たちに、かしずかれ、着替えさせられたり、食事をさせられたりしていた、というから、我々の今の感覚とまったく違う。また、こういった文化が、インカ帝国の版図拡大にも影響したかもしれない意外な可能性があるというのも、驚きである。

 篠田さんは、この件について、さらに突っ込んで「死生観の違い」を強調した。

 「──僕のイメージだと、日本の死生観のほうが彼らからすると不思議なんじゃないかと思うんです。結局、日本では、人は死ぬとみんな無くなってしまうんですよね。放っておけば腐ってしまうから。人が死んでもそのままの格好で残る土地の考え方って、きっと根本的に違うんだろうと」

国立科学博物館の特別展「インカ帝国展」で展示されるミイラたち。篠田さんの研究対象だ。

 「──エジプトですと、再生を願ってミイラをつくってますよね。あれとも違います。地下などに大きな祠をつくって、そこに遺体を布にくるんでポンと置いて埋葬する。次にだれかが死ぬとまた埋葬して……。そうすると、生きている人も、自分がどこに入るかわかるんだと思うんですよね。あそこにいるのはおじいさんで、これはお父さんで、次に自分はここに来て、その次に子どもが入るんだって……」

 そして、インカ帝国が版図を拡大するにあたって、ミイラ文化もアンデスを中心に各地に広がっていった。前回、紹介したコンドル湖周辺のチャチャポヤ人のミイラもそうだ。

 「チャチャポヤ人は9世紀頃から続く文化を持っていて、非常に好戦的でもあったんですね。インカとかなり激しい戦争をしつつ、最終的には乗っ取られる形になりました。コンドル湖の周辺の墓地には、インカに征服される前のものも、その後のものも両方埋葬されています。インカ以前のチャチャポヤ時代のものは、布にはくるんでいるんですけども、湿った気候ですからやはり中は骨です。インカ後になって、急にミイラをつくり始めるようになるんですよ」

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「インカ帝国は「不死の国」だった!」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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檜山 敦 東京大学先端科学技術研究センター 講師