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民主党を「逆分割統治」する“官僚”と吉田茂の挫折

戦後国家の胎動と日本占領(前編)

  • 村井 哲也

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2012年3月21日(水)

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 3月末に向け、消費税政局と東電国有化を巡る動きが大詰めを迎えている。その趨勢はこの国の興亡を左右するといえよう。岐路に立つ国民が政治に向ける視線は厳しい。「この国の政治はなぜ決められないのか」。「首相の権力」の戦前編では、以下の9回にわたって明治国家の確立から崩壊まで、時の首相が確かな意思決定システムを築こうとした格闘の歴史を紐解いてきた。

 「民主党政権の迷走、伊藤博文の滑走」「政変に活路開く小沢一郎と伊藤博文」「伊藤博文の悔恨と残された時限爆弾」「『ねじれ国会』を克服した山県有朋」「小沢一郎は原敬を超えられるのか」「『2大政党制』と原敬の功罪」「首相ブレーン機関の起源と運命の近衛文麿」「橋下徹の独裁批判と東条英機の“水商売”」「孤独な『東條独裁』を戦後国家への遺産

 今日から戦後編としてシリーズを再開し、引き続き、決められない政治から脱却する手がかりを探る。読み解くひとつのカギは官僚機構。昨今の消費税増税問題や電力改革でもその影響力が見え隠れする。戦後の首相はまず、敗戦を乗り越え力を温存したこの勢力と牽制と協調の攻防を繰り広げることとなった。

 事業仕分けの換骨奪胎

 事業仕分けは、民主党政権の数少ない「政治主導」だ。様々な批判はあるにせよ、無駄な歳出や事業を具体的に問題提起した意義は大きい。自民党政権でブラックボックスだった情報が次々と公開されたことは、核密約問題のそれに匹敵する。

 ただし、各省庁の抵抗によるものなのか、仕分け判定は必ずしも実行に移されていない。深刻なのは、政権交代から1年ほどで、公開された仕分けの舞台ですら行政刷新相らと政務三役の分断が露骨に見られたことだ。すなわち、政策と信条をともにするはずの民主党は、各省庁から「逆分割統治」されたのである。

 新憲法は明治憲法の矛盾を解消し、実質的に政党に強大な権力を与えている。天皇大権とこれに基づく陸海軍の統帥大権は消滅し、象徴天皇と文民統制が定められた。選挙によらず強大な権力を持った枢密院も貴族院も、藩閥元老のような特権集団も存在しない。

 新憲法の第41条は、国会を「国権の最高機関」とし、第67条は、首相は「国会の議決で、これを指名する」とした。つまり、国家意思の最高決定権者たる首相は、選挙による国会の多数派政党の党首が就任する。正面から政党政治を想定しているのだ。

 だが、戦後国家の意思決定システムが新憲法の想定通りに形成された訳ではない。まず、日本占領でGHQという超憲法的な存在があった。さらに、戦前の大物政治家が軒並み公職追放された。ただでさえブランクの長い政党は、混乱を極め政権担当能力を失う。

 対照的に、戦時体制下の統制経済で躍進した官僚機構は、GHQの間接占領統治でほぼ無傷で残された。また、縦割りの省庁ごとに強い権限を与えた国家総動員法などの委任立法は、終戦後の統制経済で継続された。陸海軍が消滅し政党が沈滞する一方で、縦割りの省庁セクショナリズムが急浮上して戦後国家は胎動したのだ。

 選挙によらず主導権を握る各省庁が本能的に目指すのは、それぞれ政治権力を持つパトロンを見つけることだ。自民党では族議員、民主党ではいまのところ政務三役がこれにあたる。政策と信条をともにする統合力が最大の強みのはずの政党は、本来の役割とは逆に、官僚機構から縦割りに分断される。これが「逆分割統治」だ(図10)。

 GHQですら「政治主導」が元気だったのは、民主化指令を次々に繰り出した最初の1~2年ほどだ。間接占領統治を逆手に取った各省庁によりパトロン化したGHQの各部局が、縦割りのセクショナリズムに巻き込まれて「逆分割統治」されたからだ。

 ここで「逆分割統治」に対峙したのが、明治国家のメンタリティーを持つ吉田茂だった。「私は政党というものに生来あまり親しみを感じなかった」との言葉は、新憲法や民主化の理念から程遠い。だが、それが故に吉田は、いったんは挫折を味わいながらも戦後国家の意思決定システムに大きな影響を与えていくのである。

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