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「ニコ生」な小沢一郎と最長政権の佐藤栄作

自民党政権の形成と高度成長の時代(中編)

  • 村井 哲也

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2012年4月5日(木)

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忘れ去られた「啐啄同機」のメッセージ

 政治家の仕事の1つは、学者とメディアに罵詈雑言を浴びせることだ。学者は、現場を知りもせず机上の空論をまくし立てる。メディアは、肝心なことは報道せず意図的な編集をする。同情に堪えない。

 だが、罵詈雑言すら場所を選ばざるを得ない政治家がいる。小沢一郎だ。いわゆる「カネ」をめぐる報道は、検察リークと記者クラブのあり方を問い直すほど過熱した。既存メディアへの不信から口を閉ざした小沢は、ネットメディアに場所を得る。

 媒体名からして、強面イメージに合わない。いや、ニコニコ動画な小沢は饒舌だった。「多くの人にオープンで、意見を言えるし、それに対して僕も反論できる…多くの方に分かってもらえる」。ネット中継なら、意図的な編集もなく国民に真意が伝わるはずと言いたいのだ。

 その小沢は、佐藤栄作政権の1969年12月に初当選している。佐藤派に属したが、その親分の既存メディアへの不信も相当に鬱積していた。それが爆発したのは、1972年6月の首相退任会見だ。「私はテレビを通して国民にご挨拶する」「新聞記者は出て行け」。記者が一斉に退席した会見場で、退任挨拶がテレビ中継された。

 有名な逸話だが、異様な会見で忘れ去られたメッセージがある。「啐啄同機(さいたくどうき)」だ。禅家の言を授けたのは、政財官界の指南役と呼ばれた安岡正篤。玉音放送の推敲や平成の元号で知られる。

 卵がフ化する時、ヒナは殻を突ついて知らせる(啐)。すると母ドリは、殻を割って助ける(啄)。機を同じうせねば新しい生命は誕生しない。玄妙な自然界の摂理を政治になぞらえた。国家の最高権力者は、歴史の流れを洞察して大事を決断する時機を誤ってはならぬ。

 今こそ噛み締めたいメッセージだが、これが忘れ去られた会見場で茫然自失の男がいた。7年8ヵ月の最長政権で沖縄返還を実現しながら、国民に全く不人気の佐藤を支えてきた楠田実だ。首席秘書官として、初めて本格的で組織的なブレーン集団を作り上げている。

 近年は、誤った政治主導や拙速な決断がはびこり、機能しないブレーン機関が唱えられる。では、どんな意思決定システムならお手本になるのか。もちろん政治に正解など存在しない。だが、佐藤と楠田による「啐啄同機」の政治主導は、少なくとも知っておいて損はない。

コメント1件コメント/レビュー

広い知識から示唆に富むまとめ方をされていて毎回楽しみにしている▼最終的な決断を下す前には、進むべき方向を決断する必要がある。その方向に向けて、必要なものを揃え、必要なことを行い、結果を作りだす。全て大事なことだが、昨今の議論では忘れられている気がする▼過去の政治家と比較して今の政治家を批判するのは簡単だ。しかし、今の政治家だって決断もし、調整をし、布石を打っている。彼らを軽々に批判する我々は、日々どれ程の"決断"をしているだろうか。その決断の実現に、どれ程の労力を払っているだろうか。そう自問した時、今の政治家を軽々に批判することは、私にはできない▼とは言え日本官僚は優秀だが頑迷なところがあるようで、予算削減という喫緊の課題に対しては、官僚の抵抗を押し切って、なんとか断行できる政治家の登場が期待されてならない。(2012/04/05)

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広い知識から示唆に富むまとめ方をされていて毎回楽しみにしている▼最終的な決断を下す前には、進むべき方向を決断する必要がある。その方向に向けて、必要なものを揃え、必要なことを行い、結果を作りだす。全て大事なことだが、昨今の議論では忘れられている気がする▼過去の政治家と比較して今の政治家を批判するのは簡単だ。しかし、今の政治家だって決断もし、調整をし、布石を打っている。彼らを軽々に批判する我々は、日々どれ程の"決断"をしているだろうか。その決断の実現に、どれ程の労力を払っているだろうか。そう自問した時、今の政治家を軽々に批判することは、私にはできない▼とは言え日本官僚は優秀だが頑迷なところがあるようで、予算削減という喫緊の課題に対しては、官僚の抵抗を押し切って、なんとか断行できる政治家の登場が期待されてならない。(2012/04/05)

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