みなさんの持つ「小さな国」というイメージとは異なり、日本は面積、人口といった物理面でも大国であり、生物資源も非常に豊富な国である。そして、侵略的外来種の輸出国でもある。コイ、ワカメ、イタドリといった日本人にとって非常になじみ深い、そして決して悪者ではない生物が世界中で忌み嫌われていることを前回紹介した。
もしかすると、ここまではご存知の方も多い話かもしれない(恥ずかしながら筆者は侵略的外来種100にワカメが含まれていることを、このコラムを書くために調べるまで知らなかったが…)。
さあ、お立ち会い。ここからはきっと新しい話だと思うので、私の無知の証明でないことを祈りつつご紹介したい。
「ツボカビ」って聞いたことがありますか?
数年前、両生類が感染すると非常に高い率で死に至る、病原性のカビが話題になったのを覚えているだろうか。中南米で猛威をふるい両生類愛好家や研究者、自然愛好家を戦慄せしめた「カエルツボカビ(以下、ツボカビ)」がそれだ。感染症名はカエルツボカビ症。
環境省自然環境局野生生物課外来生物対策室のサイト「カエルツボカビ症情報」では、おおむね以下のように説明している。
「この菌は両生類の皮膚に含まれるケラチンを分解して生きている真菌(カビ)で、水を介して他の両生類に感染する。これまで、南北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドで侵入が確認され、日本でもペットの外国産カエルに感染例が見られた。感染した両生類は皮膚を侵され、体内の浸透圧の調整や皮膚呼吸が妨げられ発症から数週間で死に至る(発症しないものもある)。日本の両生類に野外で拡散すると、カエルをはじめとする在来の両生類に影響を及ぼすおそれがあるのでカエルを野外に捨てないでほしい」
中南米では致死率が90%にも及ぶ地域があり、このカビが日本に拡散したら一体どうなるのだろう?と当時は大変心配したものである。いや、日本うんぬんの話ではなく、世界中の両生類が絶滅してしまったら、地球上の生態系が完全に崩れてしまうのではないか。そのくらいの恐怖を持って受け止められていたのである。
その一方でそれほど心配する必要はない、とする受け止め方もある。高感染率、高致死率のエボラウィルスで人類が絶滅なんてことがなかったように、発症までの潜伏期間が短く、感染者が急死してしまうような病原菌の場合、拡散する暇がない。したがって局地的に猛威をふるってその後鎮静化するというのはよくあることだからだ。
果たしてツボカビはどちらなのだろうか。そして日本の両生類の運命は…
日本は国連加盟国の中でも国土面積は一応上から数えた方が早いくらいには国土は広いですからね。国土が南北に広がっているおかげで生物分布も多様ですし。エネルギー資源や鉱物資源に乏しい分、生物資源を有意義に使えるよう、国も国民もこの分野に関心が広がるといいのですが。(2012/05/02)