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アジア新興国経済に復調の兆し、リスクは忍び寄るインフレ

中国とインドの“復活”にはまだ時間が必要

  • 孕石 健次

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2012年5月7日(月)

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今回から月1回のペースで、データに基づきながら新興国経済を俯瞰的に見ていくコラムをスタートする。世界の成長センターとして期待される新興国経済ではあるが、その実像はなかなか見えてこない。そこで、アジアを中心に、中東、中南米などの新興国にネットワークを張り巡らしている英HSBCグループに協力を仰ぎ、リサーチ本部や現地拠点からの経済・市場調査を踏まえて、最新のレポートをお届けする。

 アジア新興国では巨大な消費市場が台頭している。世界最大の自動車市場に躍り出た中国では、昨年は上海、今年は北京で大規模なモーターショーが開催された。米ゼネラル・モーターズ(GM)、日産の復活の背景にはアジア新興国市場戦略の成功がある。先進国の企業にとってアジア新興国市場は、将来の生死を左右しかねないほど重要な位置づけになっている。

アジア新興国経済は世界をけん引するか

 ここ数カ月の世界経済は波乱が続いた。アジア新興国の輸出は後退し、ユーロ危機はなお解消せず、中国経済も減速した。しかし、最近は経済指標に安定化の兆しが見られる。日本は震災復興を加速させ、米国では雇用の改善と輸出の回復が進みつつある。アジアの小規模経済国は既にその恩恵を受け始めた。

 これまでの引き締め効果が残る中国とインドはまだ本調子とは言えないが、今年半ばまでには成長支援の政策シフトで活気を取り戻すだろう。だが、回復基調に戻れば、避けて通れない問題が再浮上する。インフレ圧力の高まりは、夏場にかけて、政策当局、投資家のいずれにとっても懸念材料として再び注目されることになり、これは、構造的な問題であると同時に、景気循環がもたらす不可避の問題だ。インフレは今後数年にわたってアジア経済の重荷になるだろう。

 アジアには追い風が吹くが、中国とインドが重荷に

 直近の指標を見てみよう。悪くない数字だ。昨年第4四半期 に落ち込んだ輸出は今年に入ってから持ち直した。主要部品の供給をストップさせ、アジアのサプライチェーンを寸断したタイの洪水被害も治まった。対米輸出も回復基調にあるほか、日本では予想以上の震災復興が進んでいる。欧州は依然、懸念される状況にあるが、数カ月前の見通しと比べ、需要は上向きつつある。韓国、台湾、シンガポールを中心とするアジアの貿易国は既にペースを取り戻し、アジア全体の生産回復に寄与している。こうした状況は、景気の拡大というより、安定化というのが適当かもしれない。だが、この流れはやがて本格化する。

 とはいえ、アジアの巨人、インドと、なによりも中国を欠く状態では、従来の高成長を再現することは難しい。「春の息吹」はまだ大半が地中に隠れている。

 中国の場合は、2010年1月から2年近く続いた引き締めの影響から抜け出せていないように見える。実質GDP(国内総生産)成長率(前年同期比)は2011年第4四半期に+8.9%、2012年第1四半期に+8.1%と減速し、2009年以来の低成長となった。景況感を表すHSBC中国購買担当者指数(PMI)は、3月の製造業PMIが48.3と4カ月振りの低水準となり、サービス業PMIは53.3と2月よりやや下落、その結果、総合PMIが49.9と中立の50を下回り、景気底入れ感がまだ見られない。

 もっとも、中国の国家統計局発表の製造業PMIは3月に改善しており、OECDの景気先行指標も2011年10月に底を打ち、以降緩やかに持ち直しを示すなど、2012年第1四半期が景気の底との見方もある。実際、小売売上高や都市部固定資産投資は底堅く推移しているものの、輸出や鉱工業生産の伸び率が低い水準にあるなど生産活動が低迷しており、景気下支えが必要だ。

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