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ニッポンの「一票の格差」是正論議こそ是正せよ!

第4回 2倍以内であるかどうかが問題ではない

2012年6月27日(水)

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 前回は、「ねじれ国会」という現象を巡る「ヤバい」議論について指摘した。今回のテーマは、会期延長が決まった本国会において、またメディアにおいて、今まさに白熱した(しかし、必ずしも建設的ではない)議論が交わされている「一票の格差」問題である。

一体、格差は何倍までならいいの?

 投票価値の不平等を評価する上で裁判所やマスコミで使われる指標は、各選挙区の定数(選出する議員の数)を人口数で割った値の、最大値を最小値で割った比である。この「最大値÷最小値」がある一定値以上になると、問題視される。具体的には、衆議院では、昔の中選挙区制で3倍、今の小選挙区制で2倍を越えると、合憲性に黄信号が灯り始める。参議院については、最高裁判事によって、2倍、3倍、4倍、5倍、と様々だ。

 日本では、この「最大値÷最小値」が許容範囲を超えると、数値を小さくするため「A増B減」と呼ばれる定数是正措置がなされてきた。中選挙区時代に実施された1986年の衆議院の8増7減を例にとると、定数÷人口の値が多い7つの選挙区から1議席ずつ減らし、その値が小さい8つの選挙区に1議席ずつ増やす措置だ。また、小選挙区が導入された以降に実施された2002年の5増5減は、5つの道県から1議席ずつ減らし、5つの県に1議席ずつ増やす措置であった。

 筆者たちがまず「ヤバい」と思う問題は、判決における最大値÷最小値の許容範囲の根拠を裁判所が示していないことである。例えば参議院について、2倍の根拠として、「1人1票の原則」からすると「1人が2票以上の投票権を有する」事態を避けるべきだから、という理屈がよくある。しかしこれでは、何故1.5倍や2.5倍でなく2.0倍なのかは分からない。「2倍という数値は、常識的で分かりやすい」、「2倍は理論的、絶対的な基準とまではいえない」と判決文に付された意見で告白した裁判官も過去にいたが、正直な思いだろう。だが何の理論も哲学もなく、何となく2倍だと問題かな、という判事の主観が最高裁の判断基準になっていることは、問題だと言わざるを得ない。

そもそも最大値÷最小値に意味があるのか?

 そもそも「最大値÷最小値」は、不平等の程度を表す指標としてはまったくふさわしくない。投票価値の不平等の代わりに経済的な不平等を考えてみれば、最大値÷最小値だけに基づいて議論することが何故不適切かは、火を見るより明らかであろう。最大値÷最小値を使って「一票の格差がC倍だ」と言うのは、今年の『フォーブス』誌で日本一金持ちとされた柳井正・ファーストリテイリング会長の資産額約800億円を、(負債を除き)最低の(0円だと割れないので)1円で割って、「資産格差が800億倍だ」と言っているのに等しい。

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「ニッポンの「一票の格差」是正論議こそ是正せよ!」の著者

堀内 勇作

堀内 勇作(ほりうち ゆうさく)

米ダートマス大学三井冠准教授

シンガポール国立大学助教授、オーストラリア国立大学准教授を経て現職。2001年米マサチューセッツ工科大学(MIT)政治学博士(Ph.D.)。専門は比較政治学、計量政治学。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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