6月20~22日にブラジル・リオデジャネイロで開催される「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」。この会議では防災対策も大きなテーマの1つになる。東日本大震災を乗り越えた日本のインフラ技術を紹介する。第5回は、建設中でも地震に耐えた東京スカイツリーだ。
(外薗祐理子・日経エコロジー記者)
最も震災が来てほしくない日だった
東京の新名所、「東京スカイツリー」は世界で最も高い自立式電波塔である。着工から3年半をかけて今年2月29日に完成した。完成時の高さ634メートルに到達したのは東日本大震災から1週間後。そのニュースは暗いムードに沈んでいた日本人を静かに勇気づけた。

「震災が起こったのは、施工期間の中で最も来てほしくない日だった」と施工者である大林組の田村達一・技術本部部長は振り返る。
電波塔には災害時にも放送を途絶えさせない使命があり、強い耐震性が求められる。東京スカイツリーの場合、外周部の鉄筋造りのタワーの中に、「心柱」と呼ぶ鉄筋コンクリート造りの高さ375メートルの円筒が入っている。
両者は構造的には別々で、オイルダンパー(油の粘性を使った制振装置)などで連結されている。心柱は地震の際にタワーと異なる動きをすることで、重りとなって、タワーの揺れを抑制する。このシステムで地震時の揺れを最大で50%抑えられる。
ちなみに、日本の伝統的な木造建築である五重塔には地震による倒壊の記録はない。中央に心柱を持つことが耐震性につながっていると言われる。
心柱はタワー内部の空きスペースで作るが、その前に「ゲイン塔」と呼ばれる地上デジタル放送用のアンテナがついた鉄塔を組み立てる。200メートルを超えるゲイン塔をワイヤで塔頂まで一気に引き上げてから、少しずつ上空に押し出す。その間、タワー内部に再びできた空きスペースで心柱を組み立てていく。
震災当日はゲイン塔を高さ619メートルから625メートルまで引き上げる計画だった。あと20cメートルで目標にたどり着くという時、地震が発生した。ゲイン塔はワイヤでつってジャッキで横から押さえているだけ。心柱も完成しておらず、最も脆弱な状況にあったわけだ。
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