• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

FTAで金融市場が「国際資本の鉄火場」になるのか

レッスン5 金融サービス その2

2012年7月5日(木)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

(前回から読む

 今回はレッスン5「金融サービス」の続きです。

 前回では郵便局保険及び共済について取り上げ、郵便局保険については、韓米FTAにより実質的に負う義務はほとんどない点、共済については、組合中央会に対する規制が強まりますが、保険の購入者にとって利益になる可能性がある点を示しました。つまり、韓米FTAが、郵便局保険や共済に関連して、韓国の経済・社会に悪影響を及ぼすと考えるには無理があります。

 今回は残された懸念、すなわち『金融及び資本市場が完全に開放されてしまう』といった主張について検討していきます(※1)。金融サービスに関する条文が毒素条項であるとする根拠の一つは、「完全開放されれば、韓国の金融市場がこれまで以上に国際投機資本の遊び場になる」懸念です(※2)。

 また、(a)外国投機資本が韓国国内で何の制約なく銀行業を営むことができる、(b)外国投機資本が国内銀行の株式を100%所有できるようになる、(c)中小企業に対する貸出減少により多くの中小企業が倒産する可能性がある、(d)私債利率制限が廃止され私債問題が深刻化する点なども具体的な懸念として挙げられています。

 「韓国の金融市場が国際投機資本の遊び場になる」とはどのような意味なのでしょうか。先述したように、韓国の資本市場はほぼ全面的に開放されており、外国の資本移動が活発化しています。その結果、2000年代には外国の資本移動が拡大し、平時には資本が流入する半面、国際金融市場が不安定になると、韓国から資金が急激に流出する傾向にあります。そして外国資本の流出入、特に急激な流出により韓国の経済が影響を受けるようになりました(※3)。

翻弄されてきた歴史

 事実、リーマンショック後の金融危機が発生した直後である、2008年第4四半期には4.6%のマイナス成長(季節調整済前期比、年率換算するとマイナス17.2%)を記録するなど、実体経済も大きな打撃を被りました。このように、外国資本の動きに韓国の金融市場、ひいては景気が翻弄されています。

 もちろん政府が手をこまねいているわけではありません。資本の流出入が韓国経済に与える悪影響について再認識がなされ、政府は2010年6月に「資本流出入変動緩和方案」を取りまとめ,先物為替ポジション制度の導入(※4)、外国為替健全性負担金の導入(※5)などを行い、自由度が高かった資本移動に規制を加えることとしました。

 規制の強化は、韓国の金融市場の安定を図るための措置です。しかし、韓米FTAが発効すれば、資本市場の開放が求められるため、政府が金融市場の安定のために必要な措置を講ずることができなくなり、「韓国の金融市場がより一層、国際投機資本の遊び場としての色彩を帯びるのではないか」と懸念する声が出ています。

※1 この点に関する記述は、外交通商部「わかりやすく書いた、いわゆる韓米FTA毒素条項主張に対する反論」(2011年1月)を参考とした。
※2 金融サービスに関する条文が毒素条項であるとする主張、これに対する政府の反論は、外交通商部「わかりやすく書いた、いわゆる韓米FTA毒素条項主張に対する反論」(2011年1月)28-31ページにより記述した。
※3 政府は、【1】韓国における金融危機は外貨流出入の変動性が高い点に起因している、【2】国際金融市場が好調な場合は韓国への大規模資金流出が起こり、不調の場合は韓国からの大規模資金流出が生ずるといった見解を示している(企画財政部ほか(2010:1)。
※4 銀行は従来、現物・先物が全て含めた総合ポジションだけが規制されていた。しかし新しい規制によって、先物為替ポジションの限度が導入された。先物為替ポジションには、従来含まれていなかった通貨スワップなども含まれるようになったとともに、国内銀行の場合は、限度が自己資本の50%と定められた。また外国銀行支店も、先物為替ポジションの限度が、自己資本の250%に設定された(企画財政部ほか2010:5-6)。
※5 外国為替健全性負担金は、市中銀行、外国銀行韓国支店などの金融機関が保有する、非預金性外貨負債残高(年平均)対して、満期が1年以下に対して0.2%、1年超過~3年以下は0.1%、3年超過~5年以下0.05%、5年超過には0.02%の額で課される負担金である。銀行の外貨負債、特に短期負債の保有にコストを課すことで、銀行の外貨保有を縮小させる意図がある。

コメント0

「TPPを議論するための正しい韓米FTA講座」のバックナンバー

一覧

「FTAで金融市場が「国際資本の鉄火場」になるのか」の著者

高安 雄一

高安 雄一(たかやす・ゆういち)

大東文化大学経済学部教授

1990年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、調査局、外務省、国民生活局、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

コメント入力

コメント(0件)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

「絶対これしかありません」というプランが出てきたら、通しません。

鈴木 純 帝人社長