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反常識、イケてる人が目指す過疎の町

奇跡のNPO、グリーンバレーの創造的軌跡(1)

2012年7月11日(水)

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 徳島市内から40~50分のところに、神山町(徳島県名西郡)という町がある。人口は6300人ほど。高齢化率は46%に達する山間部の過疎の町だ。ところが、今年になって、静かな町に異変が起きた。転入者が転出者を上回ったのだ。しかも、神山町に拠点を設ける企業も増えている。なぜ神山町に移住者や企業が集まり始めたのだろうか。

 実は、その背景には神山町に拠点を置くNPO法人グリーンバレーの存在がある。彼らが生み出す場の雰囲気がクリエイティブな外部の人材を呼び寄せ、その人材が新たな場を作るという好循環を生み出した。1人の天才が生み出すクリエイティビティがある一方で、良質なコミュニティが生み出す革新もある。僻地のNPOが紡ぐ物語を見ていこう。(敬称略)

 奇跡の裏には、着実な一歩が存在している。

 吉野川の支流、鮎喰川の畔に広がる徳島県神山町――。かつてはスギやヒノキなど林業で一時代を築いたが、木材価格の低迷とともに町の賑わいは消えた。人口も昭和30年代をピークに減少の一途を辿っている。高齢化率は約46%。少子化と高齢化に呻吟する農山村の典型と言っていいだろう。

山間の農村に東京の企業が続々進出

 ところが、この5月、過疎の町は1つの話題で持ちきりになった。2011年度の人口動態調査で転入者が転出者を上回ったのだ。

ごく一般的な田舎に若者が集まるなぜ(写真 宮嶋康彦、以下同)

 社会動態が増加したと言っても、その数は11人に過ぎない。出生数と死亡数を比べた自然動態を見ても、一方の自然減は100人を超えており、人口減少が止まったわけではない。それでも、人口の社会増は合併で神山町が誕生した1955年以降で初めてのこと。その“奇跡”に町は沸き立った。

 しかも、社会増だけでなく、神山町に拠点を開く企業まで増えているというから驚きだ。

 ある古民家の2階には、徳島県の一次産品を扱うローカルアクションが事務所を開いた。その下の階には、独居老人の見守りサービスなどを手がけるテレコメディアの拠点がある。さらに、かつての縫製工場はインキュベーションオフィスになる予定。その一部を、オンライン募金システムを提供しているソノリテがコールセンターとして使うという。

 クラウドを活用した名刺管理サービスで知られる三三が神山町に古民家を借りたのは2010年10月のこと。以来、6社が神山町にサテライトオフィスを設けた。現状でも、3~4社の企業が進出を希望している。大都市に本拠を置く企業が過疎の山村にオフィスを開くなど、今の時代にそうそうないことだろう。

 四国霊場八十八カ所の札所を除けば、特別な観光資源があるわけではない。自然環境や景観にしても、神山町程度の地域は全国にごまんとある。それなのに、なぜ神山町にこれだけの人が集まっているのだろうか。

どこにでもある田舎の光景

 その理由を挙げれば、指折り数えることができる。例えば、快適なIT(情報技術)環境だ。徳島県が県内全域に光ファイバーを整備するという政策を進めたことで、町内の全住戸で光回線が利用できるようになった。「車がほとんどいない高速道路」とある住民が例えるように、ヘビーユーザーが少ないためネット環境は抜群にいい。

 生活費の安さもあるだろう。空き家の家賃は広さにもよるが、月2~3万円ほど。改修が必要な住居も少なくないが、ある程度の不便を許容できれば、改修費も家賃もそれほどかからない。しかも、山深い割に40~50分で徳島市内につくなど利便性も悪くない。場所を問わない働き方が可能な企業にとって見れば、決して悪くない条件だ。

 もっとも、ここまで述べてきたことは、どれも象の鼻であり、足であり、尻尾であり、神山町で起きている現象の一部を切り取っているに過ぎない。なぜ神山町に移住者が相次ぐのか――。より本質的なことを言えば、グリーンバレーと大南信也の存在が大きい。

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「反常識、イケてる人が目指す過疎の町」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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