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設備やカネじゃない。その雰囲気がアーティストをひき付ける

奇跡のNPO、グリーンバレーの創造的軌跡(2)

2012年7月12日(木)

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 徳島市内から40~50分のところに、神山町(徳島県名西郡)という町がある。人口は6300人ほど。高齢化率は46%に達する山間部の過疎の町だ。ところが、今年になって、静かな町に異変が起きた。転入者が転出者を上回ったのだ。しかも、神山町に拠点を設ける企業も増えている。なぜ神山町に移住者や企業が集まり始めたのだろうか。

 実は、その背景には神山町に拠点を置くNPO法人グリーンバレー(理事長は大南信也)の存在がある。彼らが生み出す場の雰囲気がクリエイティブな外部の人材を呼び寄せ、その人材が新たな場を作るという好循環を生み出した。神山町国際交流協会を設立した1992年以降、大きな絵を描かずに、目の前のできることを着実に取り組んできたグリーンバレー。その軌跡をひもとこう。(敬称略)

前回から読む)

 グリーンバレーが設立されたのは2004年のこと。その源流を辿れば、1991年3月の「アリス里帰り推進委員会」にさかのぼる。日米友好親善のために送られた青い目の人形「アリス」を米国の送り主に里帰りさせる、というプロジェクトである。

歴史に翻弄された「青い目の人形」

 経済情勢が刻一刻と悪化した1920年代後半、反日感情が悪化した米国では日本人移民の排斥運動が起きていた。その現状に心を痛めた米国人宣教師が人形を通じた交流を提唱、その呼びかけによって、1万2379体もの人形が日本の小学校や幼稚園に寄贈された。徳島県にも152体の人形が届けられている。

 ところが、太平洋戦争が始まると、鬼畜米英の象徴として大半が破壊されてしまう。

神領小学校に飾られていた青い目の人形「アリス」(グリーンバレー提供)

 戦後、調査したところ、徳島県内に残された人形は神領小学校(現神山町)の1体まで激減していた。神領小学校の1体が残ったのは、ある女性教諭が危機に瀕した人形を物置に隠していたため。その事実が露見すれば、自らの命が危険にさらされる。だが、「人形には罪はない」と人形を守り続けた。

 歴史に翻弄された「青い目の人形」が再び注目を集めるのは1990年のことだ。

 母校のPTAの役員だった大南信也はある時、小学校の廊下に飾ってある人形をたまたま見つけた。よく見ると、人形はパスポートを持っている。名前は「アリス・ジョンストン」。人形の寄贈から60年以上が経過していたが、子供の時に送ったと考えれば、送り主は生きているかもしれない。そう考えた大南は送り主を捜し始めた。

 その後、アリスの「母」はペンシルバニア州のある町に住んでいた同名のアリス・ジョンストンと判明した。しかも、彼女は既に亡くなっていたが、親戚はまだ生きているという。「母親や故郷を思わない人はいない。それはアリスちゃんも同じこと」。そう宣言すると、大南はPTA仲間など30人余りで推進委員会を結成、1991年8月に里帰りを実現させた。

熱烈な歓迎を受けたアリスの帰還

 両国の峻烈な歴史を乗り越えた人形の帰還だけに、アリスの里帰りは地元ウィルキンスバーグ市の熱烈な歓迎を受けた。ちょうど真珠湾攻撃から50年の節目だったこともあり、日本の子供たちが送った「ミス高知」という日本人形とともに、カーネギー自然歴史博物館で特別展示もされている。小さな取り組みが生み出した国際交流の大きな動き――。推進委員会のメンバーには心地よい達成感が広がった。

 そして、1992年3月、一層の国際交流を進めるために「神山町国際交流協会」を設立、大南は理事長に横滑りした。「田舎には国際交流の機会が少ないですから。そういう機会をもっと作ろうと思ったんですわ」と大南は振り返る。その後も米国側が「永遠の友情委員会」を結成、1993年にはペンシルバニア州から訪問団が訪れるなど、両地域の交流は続いた。

 神山町で始まった国際交流の芽。次の転機は1997年に訪れた。徳島県が策定した新長期計画の中で、神山町を中心に「とくしま国際文化村」を作るという構想を発表したのだ。

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「設備やカネじゃない。その雰囲気がアーティストをひき付ける」の著者

篠原 匡

篠原 匡(しのはら・ただし)

ニューヨーク支局長

日経ビジネス記者、日経ビジネスクロスメディア編集長を経て2015年1月からニューヨーク支局長。建設・不動産、地域モノ、人物ルポなどが得意分野。趣味は家庭菜園と競艇、出張。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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名和 利男 サイバーディフェンス研究所上級分析官