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ゴリラにみる「イクメンの起源」

カリソケ研究所(ルワンダ共和国)【4】

2012年7月26日(木)

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 もう1人の常駐女性研究者は、アメリカ出身のステイシー・ローゼンバウムだ。

博士号の取得をめざすステイシー・ローゼンバウム(写真:川端 裕人、以下同)

 アメリカのウィスコンシン大学マジソン校で心理学を専攻していたステイシーは、ちょっとした興味で霊長類学の講義に出た。教授は開口一番こう予言した。「この授業は、ここにいるほとんどの者には他の授業と変わらない〈その他大勢〉の一つだが、1人か2人にとっては人生を変えるものになる」

 そして、ステイシーは、霊長類、つまり猿に魅せられ、人生が変わった1人になった。

 卒論のテーマには、大学の研究室で飼育していたワタボウシタマリン(南米の小さな猿)の子育て行動を選んだし、卒業後も博士論文のための研究をしている先輩学生の助手として、マダガスカルの東部遠隔地でシルキーシファカという原猿類の調査に参加した。半年にわたって、外部との連絡もとりにくい山岳地帯での生活だったが、ステイシーは大いに楽しんだ。

 2002年にアメリカに戻ってから、スタンフォード大学の神経科学系の研究室に所属し、実験室での手技の数々を身につけた。有意義な時間だったものの、「実験室は退屈! フィールドに出たい! アフリカに戻りたい!」との想いが日に日につのっていったという。

 同じ年に開かれた、ジョージア工科大学での「フィールドの動物行動科学連続講座」に出席したことが転機になった。講師のタラ・ストウィンスキーは、連続講義の翌年からカリソケ研究所で「ゴリラのオスの相互行動」の研究を始め、その際、非常に熱心に講義に参加していたステイシーを思い出して声を掛けた。「あなた、アフリカに戻りたいんでしょ。調査助手としてルワンダに来ない?」と。

 ちなみに、ステイシーを誘ったタラは現在、カリソケ研究所の主任研究者になっているのだが、常駐しているわけではなく、普段はアメリカにいる。

 ステイシーは今のところ博士号を取得しておらず、学位論文にするための研究を進めている。初期の研究成果はすでに論文として発表されており(※)、優位のオスが未成熟個体(つまり赤ちゃんやコドモ)の相手をよくすることなど、1970年代からの知見が、群れのサイズが大きくなり、複オスの群れが増えた今もそのまま有効だと裏付けた。

※“Male-Immature Relationships in Multi-Male Groups of Mountain Gorillas”, American Journal of Primatology 71:1-10(2010)

 実はステイシーが学部生時代に研究したワタボウシタマリンは、オス・メス1頭ずつのカップルと子どもたちからなる群れをつくって、オスも育児をするので知られている。ゴリラも、父親は、母親ほどではないけれど、子どもとかかわるので有名だ。だから、彼女にとって、ワタボウシタマリン→マウンテンゴリラという流れは、自然なものだったようだ。

 現在、ステイシーはこのテーマをさらに推し進めて、成熟オスとコドモの関係を、行動だけではなく生理学的な指標を使った評価が出来ないかと考えている。

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「ゴリラにみる「イクメンの起源」」の著者

川端 裕人

川端 裕人(かわばた・ひろと)

文筆家

1964年、兵庫県明石市生まれの千葉育ち。日本テレビの記者を経て作家に。『夏のロケット』が第15回サントリーミステリー大賞優秀作品賞、「SFマガジン」で「青い海の宇宙港」を連載中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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後藤 忠治 セントラルスポーツ会長