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マニフェストを翻弄した小泉純一郎と翻弄された民主党

政権交代という「坂の上の雲」(中編)その2

  • 村井 哲也

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2012年8月17日(金)

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マニフェストの誤謬と真髄

「政権政策、マニフェストを出して、我が党を中心にした野党と正々堂々の戦いをしていただきたい」

 過剰な包括に有効打のない鳩山の構造改革は行き詰まり、再選後の党人事と小沢自由党との合併問題でつまずき辞任した。2002年12月に代表に返り咲いた菅は、マニフェストに括目する。より具体的な工程表・数値目標・財源の明示を迫ることで、小泉を揺さぶったのだ。

 田中派支配は、選挙公約を曖昧化して政官業が意思決定を事後裁量してきた。マニフェストは、選挙公約を具体化して国民が意思決定を事前契約する。この原理を、長期政権の慣習は受け入れがたい。

 ただし、後に民主党のマニフェストは破綻した。ここぞと自民党は、特に中長期ビジョンなどで政治活動を事前契約する限界を説いている。確かに財源の裏付けもないマニフェストは無謀で、その金科玉条化も無理があった。だが、その原理まで否定するのは論理のスリ替えだ。

 その誤謬は、メディアや学者の「マニフェスト幻想」に乗ったことに始まる。総花的に政策項目を並べ立て、それぞれ過度に具体的な工程表・数値目標・財源の明示と達成度の事後検証を厳密に求めた。手段の自己目的化だ。

 その役割と限界を見極めた小泉にとって、マニフェストは渡りに船となった。平壌への電撃訪問で命脈を保ったが、道路公団民営化も中途半端に終わり構造改革は行き詰まりかけていた。就任時の旋風と郵政総選挙のインパクトが強いが、小泉劇場は意外と中だるみしている。

 2003年9月の総裁選では、経世会などの各派閥は「小泉おろし」に出ている。担ぎ出しも潮時だ。だが、小泉は対抗戦略を描く。再選なら直後の内閣改造でポストを干し上げ、敗北なら解散に出て造反議員に刺客候補を擁立し、場合によれば与党分裂と野党連携で総選挙に臨む。

 結局、小泉は再選した。ねじれ国会を恐れる参院の実力者・青木幹雄を籠絡し、経世会を分断したのだ。2年後の郵政総選挙の原型と言うべき対抗戦略は幻に終わる。だが、より重要なのはこの過程で、小泉がマニフェストを踏み絵として抵抗勢力に「枠」をはめようとしていたことだ。

「総裁選で私が勝った場合は私の方針に従ってもらう。私の方針が国政選挙に臨む自民党の公約になる…出たら大騒ぎだな。私を応援するか、他の候補者を応援するか。みんな悩む。迷うだろうな」

 マニフェストの真髄は、政党政治に当然の原理を復活させる有効な手段になり得ることだ。選挙公約の曖昧化を許さず、国民は事前に本気度を、事後に達成度を厳しく問う。その代わり信任されれば、これに国民や党員を強く拘束できる。政党の一体性(凝集性)は高まり、首相の政権基盤は高まる。

 綱領もなく寄せ集めの民主党にとって、一体性を高める有効な手段のはずだった。「共存共栄」の自民党にとっては最も嫌な原理だ。だがマニフェストは、過度に具体化すれば逆に細かいところまで拘束されて身動きできなくなる。そして、政策項目を総花的に並べ立てれば焦点が拡散して拘束力は弱まる。

 マニフェストが最も威力を発揮するのは、全ての政策項目を貫徹する基本方針に「選択と集中」をした時だ。これでこそ、拘束力は強まり政党の一体性が高まる。小泉だけが、幻想に囚われずに手段を自己目的化しなかった。これが故に、意思決定改革は郵政総選挙で貫徹されていったのだ。

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中村 克己 元ルノー副社長、前カルソニックカンセイ会長