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フィリピン:グローバル人材の宝庫

  • 日経ビジネスオンライン編集部

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2012年8月30日(木)

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 フィリピンの理工系大学を卒業したメルマール・バルラン氏が、オーストラリア北東部クィーンズランド州の鉱山で働くようになったのは1年半ほど前のことだ。炎天下の中、自分の身長を超える大きさのタイヤを装着したダンプカーが昼夜を問わず行き交う。ここで建機メーカー、コマツのサービスエンジニアとして常駐している。

 ダンプカーやショベルカーが故障しないように鉱山会社に機材の扱い方を助言し、不具合が生じた場合はその原因を追究する。設計上、改良すべき点が見つかれば、コマツの製造部署に報告するのが仕事だ。

 ダンプカーなどの鉱山機械は1台数億円する。故障で稼働率が落ちると、途端に鉱山会社の収益が悪化してしまうため、充実したサポートの提供は鉱山会社が機材メーカーを選定する際の重要なポイントとなる。

フィリピン・カビテ州のコマツ人材開発センターでは、訓練生たちがサービスエンジニアの実習に励む

 現在、コマツは約100人の日本人サービスエンジニアを抱える。機材の仕組みを熟知していなければ仕事はこなせない。大学や高等専門学校で機械工学などを学んだ日本人社員を教育し、各国に配置している。

 ところが、同社建機マーケティング本部の小野慎一郎氏は「年々、日本人要員が確保しづらくなっている」と嘆く。「内向き志向」と言われる若者が増え、海外で働くことへの抵抗感が強まっているからだ。このためサービスエンジニアの高齢化が進み、現在では50代が中心になってしまった。

日本にこもる技術系社員

 コマツの米国工場など向けに、設計の問題点をリポートにまとめたり、現地の鉱山会社とやり取りしたりするには、高い英語力も求められる。「サービスエンジニアの候補として10人の日本人を新卒採用したとしても、英語力が身につかない、鉱山勤務の適性がないなどの理由で結局、海外に送り出せるのは3人ぐらいしかいない」(小野氏)のが実情だ。

 一方で、コマツの鉱山機械に対する需要は世界的に高まっており、このままではサービスエンジニアが足りなくなる恐れが出てきた。そこで小野氏が目をつけたのがフィリピンだった。

 首都マニラから自動車で南に1時間の距離にあるカビテ州に、サービスエンジニアを養成するコマツの人材開発センターがある。小野氏は現在、ここの所長を務める。

 1期生を迎え入れたのは3年前だ。バルラン氏もその1人として、15人の仲間とともに寝泊まりしながら、座学や実習に励んだ。1年後、1期生は現場研修のために各国の鉱山に散らばっていった。

 バルラン氏が配属されたのがオーストラリア北東部の鉱山だった。成績が悪ければいつでも契約を解除される。既に同期は2人脱落した。バルラン氏は正式採用を目指して、懸命に働いている。採用されれば、活躍の場は世界中の鉱山に広がる。

 就労ビザの手続きのためにフィリピンに一時帰国していたバルラン氏は10月26日、マニラのコマツ事務所に立ち寄っていた。久しぶりに小野氏と再会し、「オーストラリアで働き続けたい。何年でも構わない」と流暢な英語で申し出た。小野氏は、そんな教え子の頼もしい言葉に満足気だ。

 小野氏がフィリピンに人材を求めた理由の1つは、国民の大半が英語を自由に操れることにあった。現地のタガログ語と並び、英語が公用語になっており、グローバルに活躍する人材を確保する場に最適と判断した。

 海外志向が強いことも決め手になった。現在、9400万人いる国民の約9%に相当する約860万人が海外に滞在している。統計に表れない滞在者を含めれば、1000万人に達するとも言われる。その多くは家族を残して海を渡った出稼ぎ労働者だ。

 稼いだお金の多くは本国の家族を養うために送金している。昨年の送金額は名目GDP(国内総生産)の1割強に当たる188億ドル(約1兆4700億円)に達しており、フィリピンの消費経済を下支えしている。

 海外就労者の職種は、家事労働者(メイド)や看護師が多い。しかし、最近は変化が見られるという。

 フィリピン中央銀行のアマンド・テタンコ総裁は、「国民の技能レベルは高まっており、エンジニアや会計士、医師など様々な専門知識を兼ね備えた人材が増えている」と言う。

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