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「脱原発」でも原子力技術は衰退しない

政府は「原子力環境安全産業」の創出を

2012年9月7日(金)

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 筆者は、東京電力福島第1原子力発電所の事故を受け、内閣官房参与として2011年3月29日から9月2日まで、官邸において事故対策に取り組んだ。そこで、原発事故の想像を超えた深刻さと原子力行政の無力とも呼ぶべき現実を目の当たりにし、真の原発危機はこれから始まるとの思いを強くする。これから我が国がいかなる危機に直面するか、その危機に対して政府はどう処するべきか、この連載では田坂広志氏がインタビューに答える形で読者の疑問に答えていく。シリーズの6回目。

原子力産業の「原子力環境安全産業」への進化を

現在、政府は、「脱原発依存」の政策の具体化を検討していますが、何人かの有識者が指摘している懸念があります。この政策を進めると、日本の原子力産業は衰退していくため、必要な原子力技術が確保できなくなっていくのではないか。その懸念です。この点、田坂教授は、どうお考えでしょうか?

田坂:いえ、それは大きな誤解かと思います。我が国において「脱原発依存」の政策を進めても、日本の原子力産業は、今後、数十年を超え、無くなることはありません。

 その理由は、明確です。

 まず第一に、「脱原発依存」の政策を宣言しても、それによって、ただちに、すべての原発と原子力施設が無くなるわけではないからです。現存する原発や原子力施設の廃炉や解体を速やかに進めていくとしても、やはり何十年もの歳月がかかるのであり、その間、これらの原発や原子力施設の安全な操業と管理を行わなければならないからです。

 第二に、その廃炉や解体の作業から膨大な放射性廃棄物が発生するからです。また、たとえ直ちにすべての原発を止めても、すでに我が国には、一万七千トンの使用済み燃料が、高レベル放射性廃棄物換算で二万四千本相当が、存在しているのです。従って、この使用済み燃料や高レベル放射性廃棄物を、安全に管理・貯蔵・処分していかなければならないからです。

 特に、福島原発事故によってメルトダウンを起こした三基の原子炉は、やはり数十年かけて廃炉にしていかなければなりません。この廃炉作業は、ある意味で、この世の中に存在する高レベル放射性廃棄物の中でも、最も扱いにくい厄介な高レベル放射性廃棄物の塊を解体する作業でもあり、通常の廃炉技術とは全く異なった新たな技術開発が求められるものなのです。

これから求められる「新たな技術開発」

そうですね。福島原発の廃炉は、通常の原発と違って、全く異なった技術、全く新しい技術が求められるのですね。

田坂:そうです。そして第三に、福島原発事故の結果、周辺環境中には、大量の放射性物質が放出されており、これらの除染作業も、今後、かなりの長期間にわたって続けなければなりません。当然、この除染作業の結果発生する膨大な放射性廃棄物についても、安全に処理・処分しなければならないのです。

 第四に、福島原発の事故対策において発生した膨大な汚染水とその浄化処理の結果発生している高濃度放射性廃棄物も、その処理・処分の方法を開発しなければなりません。また、この汚染水が地下水系に漏洩しているという最悪の場合には、地下水系の浄化や、沿岸底土の除染まで必要になる可能性もあります。

 第五に、この事故の結果、国内各地での農水産物や食料品などに放射性物質が検出される事例も多発しており、適切なモニタリングと放射能検査、科学的・医学的説明を通じて多くの国民の安全と安心を確保していかなければなりません。

 こうしたことを考えるならば、もし我が国において「脱原発依存」の政策を最も急速に進めるとしても、原子力産業は、数十年を超えて存続する必要があるのです。

 しかし、いずれの場合にも、従来の原子力産業は、「新たな原子力産業」へと進化していかなければなりません。

その「新たな原子力産業」とは、どのような産業なのでしょうか?

田坂:「原子力環境安全産業」です。

 これから、我が国の原子力産業は、「原子力発電産業」から「原子力環境安全産業」と呼ぶべきものへと進化していく必要があります。

「元内閣官房参与・田坂広志が語る原発危機の真実」のバックナンバー

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「「脱原発」でも原子力技術は衰退しない」の著者

田坂 広志

田坂 広志(たさか・ひろし)

多摩大学大学院教授

1974年東京大学卒業、81年同大学院修了。工学博士(原子力工学)。米シンクタンク客員研究員などを経て、2000年多摩大学大学院教授に就任。2011年3~9月、東日本大震災に伴い内閣官房参与に就任

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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