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98歳ガール、パリに出張撮影

人生三転の女性報道写真家、笹本恒子氏

2012年9月14日(金)

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 2012年9月1日、フォトジャーナリストの笹本恒子さんは98歳の誕生日を迎えた。「60歳で還暦を祝うなんて早すぎるわよね。お祝いはもう少し先でもいいんじゃない?」と笹本さんは笑う。そう言うのも無理はない。笹本さんは、普通なら引退を考えそうな71歳という年齢から写真家としての人生を再スタートさせ、何度目かの「大輪」を咲かせたところだからだ。

 2012年8月中旬、笹本さんは東京・蔦谷書店にいた。写真集『恒子の昭和』の出版記念ミニ・トークショーとミニ写真展が開かれたからだ。歴史上の人物や出来事を独特の構図と目線で写した傑作写真の数々を、スライドで見せながら笹本さんが解説するこのイベントには、開始の数時間前からファンが押しかけ列をなした。

 ここ1年ほど毎日、メディアの取材やトークショー、講演などに引っ張りだこで、本業の撮影に取り組む暇がないのが悩みだ。「忙しすぎて、撮影の仕事をする暇がないの」。少女の頃から香水が好きで、笹本さんに近づくと、このところ愛用しているジバンシィの香水がほのかに優しく香る。

自伝が5万部の大ヒット

 笹本さんは日本で最初の女性報道写真家とされ、98歳の今も愛用のライカを手に仕事を続けている。「最近になってデジタルカメラも使い始めたの」。以前から総合誌や生活情報誌などに写真を掲載したり寄稿したりしていたが、2010年に開いた写真展「恒子の昭和」が話題を呼んだのをきっかけに人気がブレーク。2011年に出版した自伝的著作『好奇心ガール、いま97歳』(小学館)は5万部のヒット作品となった。

トークショーで話す笹本恒子さん (写真:村田和聡、以下同)

 勢いに乗り、多忙なスケジュールを縫いながら、2012年9月下旬にはパリの撮影出張に旅立つ。国籍を問わずフランスに貢献した芸術家が入居できる、郊外の老人ホームを取材・撮影するという。「年相応に見られるなんて、損よね。ありがたいことに私はいつも20~26歳ぐらい若く見られるのよ」。穏やかな笑顔を浮かべる笹本さんだが、写真家、洋服の仕立て、フラワーデザイン講師など、まさに時代の空気を読んで「手に職」をつけながら、困難をものともせず、長い道のりをこつこつと歩んできた。

 笹本さんは現在、規則正しい生活を守っている。毎朝5時に自然に目覚める。テレビをつけて英会話の講座を見る。その後「みんなの体操」で硬くなった体をほぐして、しゃきっと体を目覚めさせる。新聞の朝刊に目を通す。取材したい人を見つけると切り抜き、1980年頃から毎日の出来事や考えたことなどを書き留めてきたメモ帳に挟む。時には、新しく覚えた英会話のフレーズを書き込むこともある。

 実は、英語は女学校時代に習って以来、独学で学び続けている特技の1つだ。社会の中で女性に対する偏見が強かった時代に、「職業婦人」として生き残る上でも、大きな武器になった。8時頃に自炊する朝食は、毎日、カフェオレとパン。女学生時代から、無類のパン好きなのである。そして、化粧をして身だしなみを整える。数年前まではテニスも楽しんでいた。

 「かつては女人禁制の神域と思われていた職業の分野すらも、ぢりぢりと女性の侵蝕を蒙っている」。後に日経連初代専務理事となった前田一氏は1929年(昭和4年)、自著『職業婦人物語』にこんなことを記していた。そもそも女性が働くこと自体が煙たがられた時代だったが、少女のころの笹本さんは「絵描き、小説家、新聞記者」のどれかになりたいと本気で夢見ていた。長い人生の中ではいったん写真から離れざるを得なくなった時もあった。「自殺を考えたことも2度ありました」(笹本さん)。だが、持ち前のガッツで新しい技術を次々と吸収して世の中を渡り、幾度も職を変え、2度の結婚を経験した。時代を全力で駆け抜けた笹本さんの姿に、とりわけ中高年女性は熱い視線を送る。

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「98歳ガール、パリに出張撮影」の著者

広野 彩子

広野 彩子(ひろの・あやこ)

日本経済新聞社NAR編集部次長

朝日新聞記者を経て日経ビジネス記者、2013年から日経ビジネス副編集長。日経ビジネスオンラインでコラムの執筆・編集を担当。入山章栄氏の著作『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』を担当。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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