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「ツシマヤマネコ米」は「トキ米」を超えられるか?

生物多様性の魅力と問題が詰まった国境の島

2012年9月20日(木)

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 日本の場合、国の方針が生物資源のオープンアクセス(自由な利用を認める)であるので「ABS(遺伝資源へのアクセスと利益配分)の問題は地方自治体が主体となる必要がある」ということを以前書いた。そして、地方自治体としての文化的、物理的、生物多様性的にユニークであると考えられるいくつかの自治体(沖縄県など)を挙げてみた。

 中でも私が個人的に、ABSへの取り組みが一番効力を発揮しそうな自治体として注目しているのが長崎県対馬市である。今回と次回の2回に分けて、色々な意味で魅力的な自治体、対馬市について書いてみたいと思う。

地図提供:対馬市役所

  対馬市は朝鮮半島の南の突端、釜山市にほど近い離島の自治体で、大陸に非常に近いという地理的な特性から歴史上、我が国の玄関口であり、外交上重要な役割を果たしてきた。市内にはかつての統治者宗(そう)家の膨大な藩政記録を保存する歴史民俗資料館がある。資料館では、伊能 忠敬が測量する以前に作成された精緻な対馬地形図や、釜山に存在した長崎の出島以上の規模を持つ倭館(在外公館のようなもの)の図などの貴重な資料を見られる。

 地理的に近いこともあって、朝鮮半島との結びつきは今でも強く、市内の道路標識は大きなものは日本語、英語、ハングル語であるし、韓国からの観光客が最も多い。ちなみに本土からの観光客が少ないのは、旅行会社が対馬に力を入れていないからだ、というのが定説のようだ。確かに旅行会社のパンフレットやガイドブックなどを見ても対馬というのは壱岐のおまけのような扱いになっていることが多い。実際に訪問してみると史跡や自然景勝地などの観光資源も少なくないので、ぜひ力を入れてもらいたいと思う。

 福岡空港からの便が島に近付くと、島の中央付近にあるリアス式の浅茅(あそう)湾が目に入る。いかにも離島というダイナミックな景色である。しかし空港から見える景色はぐるり360度、低い山の緑である。南北に細長い島の海岸線は、砂浜が少なく切り立った崖が多いため道路はほとんどが内陸部を通っている。車を走らせると、離島というよりやはり山国という印象の方が強い。実際、平地は島全体の1割ほどしかなく、耕作地は少ない上に、市の中心地から離れた農村では過疎化、高齢化が進み耕作放棄地が増えているとのことだ。

 耕作放棄地には雑草が生い茂っているが、いずれ小灌木が侵入してくるという植物遷移が進む。生物多様性至上主義者としては自然に帰るわけだから悪くないと思ってしまうのだが、古くから耕作地として管理されて来た土地とその周辺環境に適応してきた動植物にとってはあまり好ましいことではないらしい。<注1>

<注1>『東南アジアの人と自然 ソウル・オブ・ザ・タイガー』(ジェフリー・A・マクニーリー、ポール・S・ワクテル著、心交社刊)の第三章にはタイ東北部にスマトラサイの調査に訪れた著者が、ガイドとして雇った猟師のプラサンが突然草原に火を放つ姿に衝撃を受けるシーンがある。プラサン曰く「火は恵みだ。火は動物も食べようとしない古い枯れ草を焼き払ってくれる。焼跡の灰は、新しい草が育つのに役立つ。もし古い草を焼かなかったら、森が戻って来て、動物たちは必要な食べ物をみつけられなくなるじゃろう」。人と火と野生動物の関わりは古代から続く。結局のところ、伝統的知識に裏打ちされた適正な規模とは何かの問題なのかもしれない

農業従事者の高齢化で伝統農法が失われる懸念

向かいの森が伝統的な焼き畑を実施していた森、手前の草原が耕作放棄地。草原の状態ならまだ良いが、ここに灌木が入り始めると地中深く張る根によって穴が穿たれ、その穴から湿地帯の水が流出して半乾燥地になってしまうのだそうだ

 島では十数年周期の焼き畑と植林を繰り返す「木庭作(こばさく)」という伝統的焼き畑農法を実施していたのだが、これが森林の更新と里山の活性を促していた。現在、木庭作は行われておらず、杉やヒノキなどの植林が中心となり、あまり手も入れられていないことで、生物多様性の観点からは停滞気味である。

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