「リーンスタートアップ」─小さな失敗を重ねて育てる

 米シリコンバレー発の起業の新しい手法「リーンスタートアップ」が注目されている。コストをあまりかけずに最低限の製品やサービス、試作品を作って顧客の反応を見る。このサイクルを繰り返すことで、起業や新規事業の成功率が飛躍的に高まるという。

 ヒューレット・パッカード、アップル、インテル、グーグル、フェイスブック──。後に世界的な大企業へと飛躍したベンチャーを数多く輩出し、ベンチャーの聖地とも呼ばれる米シリコンバレー。この聖地でも、無数に生まれるベンチャーの中で、大企業までに成長するのはほんの一握り。大半は事業のアイデアや製品がものにならずに消滅していく。その様相を表す「せんみつ(1000のうち3つ)」という言葉さえある。成功するのは1000社に3社、つまり、起業しても0.3%しか生き残れないという意味だ。

 これほど低い成功率をいかに引き上げるか。それはシリコンバレーでも長年の課題であり、様々な起業の手法が考え出されてきた。そうした手法を取り入れつつ、マネジメント論として体系化した理論が新たに登場。米国だけでなく海外でも注目を集めている。

 「リーンスタートアップ」がそれだ。英語で「無駄がない」という意味の「リーン(lean)」と、「起業」を意味する「スタートアップ」を組み合わせた名称である。

名称はトヨタ生産方式に由来

 「リーン」という言葉を見て、製造工程で可能な限り無駄を省くトヨタ自動車の生産方式が、英語で「リーンプロダクションシステム」と呼ばれていることを思い起こす読者も多いだろう。

 リーンスタートアップの提唱者である米国の起業家、エリック・リース氏は、紆余曲折の末にインターネットのコミュニケーションサイトを運営するベンチャーの立ち上げに成功した。

 その体験を基に起業の手法論としてリーンスタートアップをまとめている時、トヨタ生産方式について学び、自身の手法と「ムダ取り」などとの間に共通点を見いだした。リーンの由来はそうした点にもあると見られる。

 リーンスタートアップを広める目的で、昨年9月に米国で出版した著書『The Lean Startup』は大きな反響を呼び、全米でベストセラーとなった(日本語版は日経BP社が発行)。

 リーンスタートアップのポイントは、新たな事業を小さく始めて成功しそうかどうかを早期に見極め、芽がないと判断したら、すぐに製品やサービスを改良したり、事業の内容を一新したりして、軌道修正を繰り返すことにある。傷が浅いうちに進路を変更し、重傷を負って事業そのものが継続できなくなる事態に陥るのを防ぐためだ。こうしてチャレンジを続け、成功へと近づいていく。

 早期に有望か否かを見定め、軌道を修正できるのは、次のような手順で仮説の構築と検証を繰り返すからだ。

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著者プロフィール

宇賀神 宰司

宇賀神 宰司

日経ビジネス記者

日経クリック、日経ベンチャー(現・トップリーダー編集などを経て、2007年1月から日経ビジネス編集記者。流通、中小ベンチャー、マネジメント、IT(情報技術)を担当する。

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