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成長を維持するには企業文化の変革が必須

真のグローバル生産と高性能部品の内製化がカギ

  • 稲垣 公夫

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2012年10月19日(金)

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 前回までに述べてきたように、フォックスコンはアップルという「ドリームカスタマー」を得てダントツな規模のEMSにまで成長した。その背景には郭台銘(テリー・ゴウ)会長の強力なリーダーシップや強烈で強引な企業文化、そして広く深い部品技術がある。

 では、このような高い成長率を、今後もフォックスコンは維持していけるのだろうか?私は同社の前に、いくつかの大きな壁が立ちはだかっていると考えている。

 一つは中国集中生産の限界だ。フォックスコンはグローバルに工場を展開しているとはいえ、生産能力の90%以上を中国本土に備えている。アップル向けの製品は小型軽量で輸送コストが安く、また世界中に同じモデルが売れることから、中国での集中生産が最も合理的な選択だろう。しかし電子業界の今後の成長は、インド、南米、ロシアといった新興国が支えると考えられており、こうした諸国には関税などの障壁があることから現地生産が不可欠となる。生産のグローバル化を本格的に展開しなくてはならず、これはフォックスコンにとって最大のチャレンジになるだろう。

 フォックスコンがアメリカのマスコミに広く取り上げられるようになったのは、2010年に同社の華南工場で自殺者が相次いで出たことが原因だった。アメリカのマスコミはフォックスコンの工場での過酷な労働環境が自殺につながったと非難した。同じころ同社のメキシコ工場では、労働者が工場に放火する騒動が起こった。労働者が帰宅するためのバスが遅れた際に、会社が残業を強制するためにわざと手配を遅らせたという噂が広がったためだ。

中国以外の各国に生産を分散させる必要性

 フォックスコンは自殺事件をきっかけに、華南工場に生産を集中することのリスクに気づいた。華南工場で働く労働者の大半は、故郷を遠く離れて長期間出稼ぎに来ているため心理的に不安定になりやすいうえに、華南地域では人手不足により賃金が急上昇していた。そこで同社は、華南工場の規模を一気に縮小して、中国でもより内陸部に建設した工場に生産を移した。ところが最近、スマートフォン「iPhone」を作っているとされているフォックスコンの内陸部の工場で、大規模なストライキが発生したと報道された。フォックスコンはそれを否定しているが、何らかの労働争議が発生したことは明白である。

 フォックスコンだけでなく台湾や韓国の企業の工場運営は、日本企業と比べて強圧的なトップダウンである。このようなトップダウンの工場運営はこれまでの中国では通用していた。しかし、自殺事件や労働争議などが発生したことを鑑みると、経済の発展が著しい中国においてその運営方法には限界があることが露呈した。こうした強引な経営方法は、労働者の権利意識が強い東欧や中南米では、中国よりはるかに強い反発を生み出すだろう。これはフォックスコンに限った話でない。例えばある韓国の電子メーカーの東欧のテレビ工場では、労使関係が悪すぎて昼間の一直でしか操業できなかった。この点北米系EMSは、優秀で経験豊富な現地人を幹部に登用してうまく現地流に合わせた経営ができる。

 フォックスコンが今後工場をグローバル展開する上で、優秀な現地人を使えるようになることが鍵となる。しかし、同社の企業文化からいって、このことは容易ではないだろう。これまでフォックスコンの快進撃を支えてきたのは、猛烈に働く社員と強烈なトップダウン体制、そして厳しい社内競争だ。このような仕事のために個人の生活を犠牲にするというやり方は、中南米や東欧の人たちの価値観にはなじまない。日本企業ですら北米やヨーロッパにおいて仕事と私生活のどちらを優先するかに関して、日本人と現地人の価値観の対立に悩まされた。台湾や韓国企業の価値観は戦後高度成長期の日本人以上の「モーレツ社員」や「企業戦士」指向である。それが彼らの強みであるが、逆にグローバル化を阻害する要因でもある。

技術をじっくり育てられるのか

 フォックスコンの抱えるもう一つの問題は、同社の経営の焦点が工場運営から技術開発へと移りつつあることだ。フォックスコンの経営陣の悩みは、売り上げ成長の維持よりも利益率向上にあるはずである。同社の売り上げは年々順調に成長しているが、利益率は低下している。利益率を向上するには機構部品だけでなく、液晶パネルやタッチパネル、半導体といった、電子機器でも多くのコストを占める部品の内製化が必要となる。同社は数千億円を投じて台湾の大手液晶パネルメーカーの奇美電子を買収した。しかし奇美電子は日本の液晶パネルメーカーに比べて技術力が低く、アップルが要求するような高性能な液晶パネルが開発できなかった。フォックスコンがシャープに出資交渉をしたり、NECに95億円を払って液晶の特許を購入したりするのは、先端技術を手にしてアップル向け事業のより多くの部品を内製化して利益率を上げたいからだ。

 問題はこうした先端技術を開発するには5年、10年といった単位での、長期的視点から投資する必要があることだ。フォックスコンは、すでに確立した先端技術を巨額の金を払って外部から買うことは得意でも、失敗するリスクの高い研究を長期間社内で行うことは、非常に難しいのではないだろうか。

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