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対症療法で欧州の病は根治しない

不可欠なのは輸出競争力の向上

2012年12月4日(火)

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 「欧州は日本と同じように『失われた10年』を経験するかもしれない」。こんな懸念が欧州の通貨政策担当者や経済学者の間で高まっている。

 その最大の原因は、ユーロ危機だ。欧州諸国の債務危機は2009年末に表面化して以来、既に丸3年が経過している。しかし、欧州連合(EU)は対症療法に追われるばかりで、病の根本的な治癒に至っていない。

ユーロ圏の前途を覆う不確実性

 欧州が「失われた10年」に向かう危険性は、国際通貨基金(IMF)が2012年10月に発表した「世界経済見通し(WEO)」にはっきりと表れている。IMFは、2013年の世界経済の成長率を3.6%と予測、2012年7月に発表した予測値よりも0.3ポイント引き下げた。IMFは、その最大の原因がユーロ圏の先行きに関する「不確実性(uncertainty)」にあると指摘する。

 IMFはWEOの中で「スペインとイタリアの国債の利回りが2012年夏に上昇したことで、ユーロ危機の深刻さが増した」として、2013年のユーロ圏の成長率を0.7%から0.2%に修正した。事実上のゼロ成長である。つまり欧州が、世界経済全体の足を引っ張っているのだ。

 欧州の中で比較的経済状態が良いドイツでも、黄信号が灯った。キール世界経済研究所など4つの経済研究所は、2012年10月に発表した秋季経済見通しの中で、2013年のドイツの予測成長率を2%から1%に引き下げた。経済学者たちはその理由を「ユーロ危機に対する懸念から、多くの企業が投資をためらうため」と説明している。

表1(IMF発表のGDP成長率)
「ユーロ圏は世界の成長のブレーキに」
2013年までの経済成長率予測(資料・IMF WEO 2012年10月発表)
2013年までの経済成長率予測(資料・IMF WEO 2012年10月発表)

 2012年10月に東京で開かれたIMF・世界銀行年次総会でも、経済学者たちは「uncertainty」という言葉を繰り返し使った。例えばIMFのオリビエ・ブランシャール経済顧問・調査局長は記者会見でこう語った。「経済成長にブレーキをかけているのは、ユーロ危機に伴う財政緊縮政策だ。さらに金融システム、特に欧州の銀行が十分に機能していないことも問題だ。ユーロ圏では、低成長によって、銀行システムの体力がさらに弱まるという悪循環に陥っている。欧州の政策当局者がユーロ危機を本当に解決できるかどうか、不確実性が世界に広がっている」。

 つまりブランシャールはこう言っているのだ。(1)EUがギリシャやポルトガルなどの債務過重国に要求した財政緊縮政策が、これらの国々で不況を悪化させている。(2)さらに、ユーロ危機が「第2のリーマンショック」に発展することを恐れた金融機関の貸し渋り傾向が、欧州経済を収縮させている。

 ブランシャール氏は、東京でドイツの新聞記者の質問に答えて、欧州の債務危機と銀行危機が、「失われた10年」につながる危険があるとも警告した。同氏は、「バブル崩壊後、日本の通貨政策の規模が十分でなかったことが、クレジットクランチと不況を長引かせた」と分析。日本の経験を踏まえて、銀行危機を伴う不況が非常な長期間に及び、経済に深い傷を与える可能性があるとして、十分に警戒しなくてはならないという立場を取っている。

 また彼は、債務危機の影響が今後長期間にわたるという見方を示した。「(ユーロ危機との戦いは)短距離競走ではなくマラソンだ。これから何年もかかるだろう。ゆっくりと着実に走る者だけが勝利する」。痩身で修行僧を思わせるブランシャール氏の厳しい表情には、ユーロ危機はまだ峠を越していないという危機感がはっきり表れていた。

 IMFは「欧州諸国が金融危機の克服に失敗した場合、クレジットクランチが深刻化する。2013年末までに、南欧諸国における民間の融資額は最悪の場合、現在に比べて18%減少する」と警告する。貸し渋りが南欧諸国の経済成長の足かせとなることは言うまでもない。

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「対症療法で欧州の病は根治しない」の著者

熊谷 徹

熊谷 徹(くまがい・とおる)

在独ジャーナリスト

NHKワシントン特派員などを務めた後、90年からドイツを拠点に過去との対決、統一後のドイツの変化、欧州の政治・経済統合、安全保障問題、エネルギー・環境問題を中心に取材、執筆を続けている。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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