2012年11月1日、衣料品通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイは経営の大きな転機を迎えた。ゾゾタウンでの買い物の送料を完全に無料にしたのだ。それだけでなく、商品代金の1%だったポイント還元率を10%まで一気に引き上げた。
前澤友作社長がツイッターで、送料を無料にすることに批判的なコメントを書き込み、その後に謝罪したこともあって、スタートトゥデイの劇的な方針転換は大きな話題になった。
その少し前、実はスタートトゥデイはもう1つの決断を下していた。ネット販売というバーチャルを越えて、リアルビジネスにも進出したのである。2012年9月に開いた、同社初のファッションイベント「ZOZOCOLLE(ゾゾコレ)」がそうだ。EC(電子商取引)事業で急成長したスタートトゥデイが、ネットの外に打って出た格好だ。
なぜスタートトゥデイはリアルの世界に踏み出したのか。そこには成長鈍化という、創業から初めて味わう強い危機意識があったことは間違いない。スタートトゥデイは2012年10月に2012年4~9月期決算を発表したが、結果は期初の計画を下回った。売上高と営業利益はともに計画に届かず、達成率はそれぞれ85.9%、82.8%にとどまった。
成長の踊り場に差し掛かりつつあるスタートトゥデイの次なる起爆剤として、前澤社長が仕掛けたのがゾゾコレだったといえる。ゾゾコレにはユナイテッドアローズやビームスなどから70ほどのショップが参加。来場客は最新のファッションアイテムの現物を見たり、試着したりしたうえで、購入をその場で予約できる。ゾゾコレでないと手に入らない限定品も取りそろえた。
9月15日から2日間の日程で開催したゾゾコレは話題を呼び、和歌山県と鳥取県を除く日本各地から約1万人が押し寄せた。ゾゾコレに参加するため、新たに会員登録した人が想定以上に多かったという。9月21日からはゾゾタウン内でもバーチャルのゾゾコレを開催し、予約を受け付けている。
最後までの粘りに自前のITは欠かせない
そんなゾゾコレの開催を取りまとめたのが、中川龍イベント実行委員会ディレクターである。
中川ディレクターは前澤社長の誘いを受け、2012年1月にイベント広告会社からスタートトゥデイに転じた人物だ。イベント開催のスペシャリストといえる存在である。ゾゾコレを成功に導くため、中川ディレクターはスタートトゥデイの強みを引き出すことに注力。その最たるものが自前のシステム開発力だった。
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