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バングラデシュ火災の「いつか来た道」

2012年12月10日(月)

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 痛ましい事故が起こった。11月24日夜、バングラデシュの首都ダッカ郊外に立地する縫製工場「タズレーン・ファッションズ」で火災が発生。当時、工場には従業員が多数残業していた。従業員たちは逃げ惑ったが、非常口などの防災設備が整っておらず、やがて炎に包まれた。たまらずに工場の窓から飛び降りる従業員も出たという。犠牲者の数は100人を超えた。

 すぐに「犯人探し」が始まった。

 出火時に従業員たちの脱出を適切に誘導しなかったとして同施設の管理職が逮捕された。同工場の経営者は「非常口を用意しなければならないとは知らなかった」と発言し、バングラデシュ国民から怒りを買っている。政府は、出火の原因を早々に「放火」と断定した。まるで、たまたま防災設備が整っていなかった工場が、運悪く放火されたからこれだけの大惨事になったのだ、とでも言うようだ。

 だが、現実には、この事故は単に不運に起因するのではない。

 バングラデシュの労働者支援団体などによれば、ここ数年間で、繊維工場の火災が原因で亡くなった従業員の数は少なくとも500人。ダッカで働く繊維業界関係者は「放火か漏電が原因か分からないが、小規模な火災の話はよく聞く」と言う。

 バングラデシュに限った話ではない。9月にはパキスタンで同じく繊維工場が火災を起こし、約300人が犠牲になった。国際労働財団によれば、同工場は窓には鉄格子がはめられ、スプリンクラーも設置されていなかった。

かつては中国でも火災が頻発

 南アジアで相次ぐ悲劇は、その工場に発注している先進諸国のメーカーからすれば「いつか来た道」だ。

 人件費などの生産コストが安価な国や地域で製造し、価格競争力を高める。多くの衣料チェーンが取る“合理的”な戦略だ。結果、世界中のチェーンは、生産拠点をまず中国に構えた。そして、その1990年代には、中国の繊維工場で大規模火災が頻発している。ほか、現在南アジア諸国で問題になっている、児童労働や残業代不払いなどの不法労働行為もしばしば問題になった。

 中国政府や進出企業がこれらの問題を乗り越えようと模索し続けてきた結果、現在では中国国内法や進出企業側の行動指針が整備され、賃金に対する労使対立はあっても、労働者の安全や生存に関わる問題が起こることは大幅に減っている。だが、労働環境が整備されるのと裏腹にコストが上がって、企業は、中国よりも低コストで生産できる南アジアへの南進を始めた。

 そして、その移転先で、多数の犠牲者を出す大規模火災が繰り返されてしまった、というわけだ。

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「バングラデシュ火災の「いつか来た道」」の著者

池田 信太朗

池田 信太朗(いけだ・しんたろう)

日経ビジネスオンライン編集長

2000年に日経BP入社。2006年から『日経ビジネス』記者として、主に流通業界の取材に当たる。2012年『日経ビジネスDigital』のサービスを立ち上げて初代編集長、2012年9月から香港支局特派員、2015年1月から現職

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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