
最後に、健やかな睡眠のために心がけるとよいことは何だろうか、考える。
ここまで読んでくださった方は、「心がけるべき」などと「べき」論になってしまうと、不眠などには逆効果かも知れない可能性を織り込んだ上で読んでほしい。
この話題の導入として紹介したいのは、意外かもしれないが「宇宙と睡眠」というテーマ。
「私はJAXA(宇宙航空研究開発機構)の宇宙医学研究のワーキンググループに参加していまして、睡眠や体内時計の担当なんですね。宇宙空間で困る医学的な問題は、宇宙酔いだとか、重力がないための骨粗鬆症とかいろいろあるんですけど、睡眠や体内時計の問題も大きくて、今の宇宙飛行士の6割以上が睡眠薬を常用してるんですよ。短期のミッションだと、毎日30分ずつ前倒しして、早寝早起きしながら戻ってこなきゃならないんですが、そんなことを普通にできる人間ってほとんどいませんから、みんな不眠症になっちゃうんですよね」

そういえば、三島さんの研究所の隔離実験室である「箱」は、まさに宇宙船のようだと連想した。地上から、日常生活から、隔絶した世界ということで、似ているのだ。さらにいうと、宇宙飛行士を支援する地上の管制官などでも不眠をはじめとする睡眠の問題が多いそうだ。管制官も、宇宙飛行士都合やミッションの都合に応じて働かなければならないから、ある意味、地上の環境から隔絶されがちだ。
助言を求められた三島さんは、ある一般的な「処方箋」を紹介した。「睡眠障害対処 12の指針」と呼ばれるもので、元々、厚労省の「睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会」が作成した。もちろん宇宙関係者のために作られたものではなく、一般向けだ。極端な環境に置かれている宇宙飛行士と、ごく普通に日常を生きる我々も、睡眠の問題の根っこも対処の仕方も変わらないということ。
以下、三島さんによる解説もまじえつつ紹介する。

睡眠の都市伝説を打ち破り、大きな反響を呼んだ「睡眠学」の回が、追加取材による書き下ろしと修正を加えて単行本になりました! 日々のパフォーマンスを向上させたいビジネスパーソンや学生はもちろん、子育てから高齢者の認知症のケアまでを網羅した睡眠本の決定版。睡眠に悩む方々は、本書を読んでぜひ理想の睡眠を手に入れてください。
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