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エル・グレコが描いた天上オーケストラ

絵画はなぜ音楽を表現するのか

2012年12月21日(金)

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 開催中の美術展やアートイベントを巡りながら、アートの深部に迫る「アートいろは坂」。今回のテーマは、ギリシャに生まれスペインを活躍の地としたエル・グレコだ。教科書などでも目に馴染んだ作家だが、日本の美術館には作品が2点しかないという。そこで、約25年ぶりにまとまった数の作品が国内で披露されている「エル・グレコ展」を見るため、大阪に足を運んだ(東京にも巡回する)。画家の全容を楽しみながら、その流麗な表現の源泉を探ると…。

 大阪市の国立国際美術館で開かれている「エル・グレコ展」を訪ねて、極めて興味深い作品に出合った。スペイン・マドリードのティッセン=ボルネミッサ美術館が所蔵する「受胎告知」。スペイン美術の黄金時代を築いた画家の1人といわれるエル・グレコ(1541-1614年)が1600年頃に描いた宗教画である。

エル・グレコ「受胎告知」(1600年頃、ティッセン=ボルネミッサ美術館、マドリード ©Museo Thyssen-Bornemisza, Madrid)

当時の音楽事情が類推できる貴重な作品

 印象的だったのは、この作品で画家が縦長の画面を極めて効果的に使っていることだ。大天使ガブリエルがマリアに「あなたは身ごもった」と伝える場面を見せるのが、この絵本来の趣旨。それが描かれているのは、画面の下半分だ。例えばレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた「受胎告知」では、この場面だけで画面が埋まっている。

 エル・グレコを日本で有名たらしめている1枚ともいえる大原美術館(岡山県倉敷市)所蔵の「受胎告知」(本展には出品されていない)や、イタリアのベネチアでエル・グレコが修業をしていた頃の作品としてこの展覧会で展示されている別の「受胎告知」も同様だ。

 件の「受胎告知」では、特に上半分の表現に目が吸い寄せられた。描かれているのは、文字通りの「天上」。コントラバス、ハープ、リュートらしき撥弦楽器、リコーダー、チェンバロの前身と思われる鍵盤楽器などをオーケストラさながらに演奏しているのは天使たちである。譜面を見ながら手を振っているように見える指揮者役らしき天使がいるのも興味深い。当時の音楽事情を類推する上でも貴重な作品だ。

 指揮者がいることもあり、彼らはおそらく好き勝手におのおのが楽器を奏でているわけではなく、ある一つの曲を合奏していると想像がつく。彼らがみな指揮者の方を向いていることも、それを物語る。一人ひとりの表情も実にいい。彼らはただ音を出しているだけではない。皆、音楽に没入していることが分かる。単に演奏者たちの姿を写したのではなく、そこに流れている音楽を表現した絵といっていい。

エル・グレコ「受胎告知」(1576年頃、ティッセン=ボルネミッサ美術館、マドリード ©Museo Thyssen-Bornemisza, Madrid)

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「エル・グレコが描いた天上オーケストラ」の著者

小川 敦生

小川 敦生(おがわ・あつお)

多摩美術大学美術学部芸術学科教授

日経マグロウヒル社(現・日経BP社)入社後、日経アート編集長や同社編集委員を経て、日本経済新聞社文化部へ。美術担当記者として多くの記事を執筆。2012年4月から現職。専門は美術ジャーナリズム論。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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