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「よく生き、よく死ぬ」社会をつくりたい

介護の“排泄問題”にロボット技術で挑む、宇井吉美さん

2013年1月29日(火)

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 女性の視点をビジネスに生かし、社会や経済に変革をもたらす――。2012年6月、日本政策投資銀行(DBJ)が主催する「第1回女性新ビジネスプランコンペティション」のファイナリストおよび受賞者が発表された。それから半年。この連載では5週連続で、応募総数643人の中から勝ち残ったファイナリストおよび受賞者のうち5人の「これまで」と「これから」にスポットライトを当て、5者5様の女性たちの生き方、働き方を追う。

 女性起業家と聞くと、「自分には無理」「違う世界に住んでいる人に違いない」と思う人も、少なからずいるだろう。しかし、実際に会って話を聞くと、そこには身近な出来事や思いを原動力に、時に悩み、時に挫折感を味わいながらも歩み続ける、等身大の女性たちがいた。

 第1回目となる今回は、ロボット技術でヘルスケア業界に革新を生み出そうと奮起している、abaの宇井吉美さん(24歳)。起業のきっかけは、中学生時代の原体験にあった。

原体験――うつ病の祖母、壊れる家族の絆

宇井吉美(aba代表取締役兼CEO)
宇井吉美(aba代表取締役兼CEO)
1988年生まれ。中学時代、祖母のうつ病がきっかけで、ロボット技術でヘルスケアに役立つモノ作りがしたいと思い至る。2007年に千葉工業大学に入学、介護現場を支援するための機器・ロボット開発を行う学生プロジェクト「aba(awakened bunch activity)」を立ち上げる。非接触型の尿検知センサーの実用化に成功し、2011年に行われた「学生ビジネスコンテスト in CHIBA」でグランプリを受賞すると同時に起業。2012年には、日本政策投資銀行が主催する「第1回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション」でファイナリストに選ばれた(写真:渡邉茂樹)

 起業家になるなど想像もしていなかった私が今に至るきっかけは、祖母のうつ病にあります。働くことが好きな「肝っ玉母さん」。当時、私が祖母に抱いていたイメージです。両親が共働きだったこともあり、幼い頃から祖母は私と妹の面倒を一手に引き受けていました。

 そんな祖母が突然、うつ病になったのです。私が中学生のときでした。

 「うつ病って病気なの?」。当時、私を含め家族は半信半疑でした。何が原因なのか思い当たる節もありませんし、自分たちに何ができるか分からない。でも、せめて愚痴ぐらい聞いてあげよう。そんな風に、新たな生活がスタートしていきました。

 でも、穏やかな日は、そう長くは続きませんでした。

 「自分は世界で一番不幸な人間だ」
 「生まれてなんてこなければよかった」

 今までの愚痴をすべて開け広げるかのように、祖母は自分の人生をひたすら否定し始めました。泣き言が1日中、終わりのない状態で続きます。周囲の家族は戸惑い、やがて疲弊していきました。半年後には、祖母がいるリビングには誰1人として立ち寄らず、私も学校から家に帰ると、そのまま自分の部屋に向かう。それが私の中学、高校時代の原体験です。

 「人が人を支えるには限界がある」。うつ病の祖母と暮らす中、いつしか私はそんな思いを強く抱くようになっていきました。そんな中で出合ったのが、ロボット技術でした。

 うつ病の祖母を抱えながら、将来に向けて何がしたいのか自問自答する日々。そんな中、筑波大学のオープンキャンパスで、宇井さんは「コミュニケーションロボット」にくぎ付けになる。高校2年の夏のことだった。

 高校1年生のときに筑波大学の実験教室に参加したことがあり、とてもいいキャンパスだと当時から思っていました。そこで筑波大学のオープンキャンパスに4日間通い詰め、理系学部の全学科を見て回りました。そして、最終日のテーマが「コミュニケーションロボット」だったのです。

 最先端のロボット技術を目の当たりにした瞬間、私が祖母のうつ病を通じて抱いていた思いとロボットの存在が、一直線につながりました。

 「おばあちゃんの愚痴を聞いてくれるロボットがあったらいいな」

 当時はそのぐらいの発想だったと思いますが、気づくとその場にいた筑波大学の担当の方に、「人を癒すロボットを作りたい」と話している自分がいました。そして、「人の心とロボット技術について真面目に研究している教授がいる」と紹介されたのが、当時、青山学院大学で教鞭を執っていた富山健教授でした。

 この日から、私には「富山先生の下でロボット工学に取り組む」という明確な目標ができました。その後、富山先生が千葉工業大学に移られたと聞き、進学先を千葉工大に変更。富山先生のところなら、やりたいことができると信じていました。

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「「よく生き、よく死ぬ」社会をつくりたい」の著者

瀬戸 久美子

瀬戸 久美子(せと・くみこ)

日経WOMAN編集部

旧・日経ホーム出版社(現日経BP社)に入社後、日経WOMAN、日経TRENDY、日経ビジネス編集を経て2013年4月より現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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川野 幸夫 ヤオコー 会長