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温泉旅館のサービス、ほとんどは戦後生まれ

三重県・紀伊長島の「割烹の宿 美鈴」・その2

2013年2月14日(木)

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 「割烹の宿 美鈴」がある三重県・紀伊長島。周辺に大きな観光地があるが、紀伊長島そのものには、わざわざ観光で訪れるような場所はない。美鈴はかつて夏の海水浴客や釣り客をターゲットにした7部屋だけの小さな民宿だった。

 前回は、その小さな民宿が顧客へのサービス品質向上を第一に改革を進め、その結果、宿泊料金を当初の10倍にした経緯についてまとめた。今回は美鈴のサービス品質の磨き込み方を、料理を中心にもう少し詳しく紹介したい。

「地元でしか食べられない料理」へのこだわり

 紀伊長島という決して良いとは言えない立地で美鈴のようなサービス業を経営するには、一度利用してくれた客に繰り返し来てもらわなければならない。また一度利用した人が周りの人に薦めてくれなければならない。だが、それは簡単なことではない。

 特に料理が難しい。1週間だけというのであれば、満足させる方法はいくらでもある。しかし、繰り返し利用してくれる顧客を常に満足させるのは並大抵の努力では不可能だ。単に豪華に見える料理を作ればいいということでは済まないのだ。

 だから美鈴には食事のメニューがない。代表の中野博樹氏の後継者である中野勇樹氏が近隣の農家から地元でしか食べられない新鮮な野菜を仕入れ、時には漁に出て自ら魚を獲る。つまり食材はほぼ地の物を使い、地域の一次産業と共存共栄していくことを目指している。

 どの食材を仕入れられるかはその日にならないと分からない。仕入れることができた食材で毎日提供する料理を決める。メニューを事前に決めてしまうと必ずその料理を提供しなければならず、提供するためにベストでない食材も仕入れなければならなくなる。食材のロスも出る。

 様々なスパイスなどを使って手間をかけた料理はどこでも食べられる。高級食材も全国に流通している。そのような料理を提供したとしても、東京や大阪からわざわざ紀伊長島まで食べにきてくれることはない。だから美鈴では都会では絶対に食べることができない、新鮮な海産物や季節の野菜をシンプルに調理した地元で長く食べ続けられている料理しか出さない。

 とはいえ、それは家庭で日々食べられているような郷土料理でもない。ヤドカリやカラスミといった地元で日常的に食べられている食材をシンプルながら丁寧に調理しているのが美鈴の料理である。それを懐石料理風に座敷で一品ずつ提供していく。

「割烹の宿 美鈴」の名物の1つとなっている自家製カラスミ

 美鈴ではサービスの品質を高めるため、最初に改装した際に、宿泊客が意見を書き、投書できる小さな郵便ポストのような箱を館内に設置した。投書箱を置いたことで、様々な意見が数多く寄せられるようになった。最初の投書は「ティッシュペーパーを部屋に入れて欲しい」というもので、すぐに対応した。代表の中野氏は当時、「なんでそんな簡単なことに気づかなかったのか」と感じたという。

館内に置かれている郵便ポストの投書箱

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「温泉旅館のサービス、ほとんどは戦後生まれ」の著者

内藤 耕

内藤 耕(ないとう・こう)

サービス産業革新推進機構代表理事

世界銀行グループ、独立行政法人産業技術総合研究所サービス工学研究センターを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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