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既に広まっている技法を特許申請した会社

ファッションと知的所有権の難しい関係

2013年3月5日(火)

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 前回、国内企業同士の色・柄の「パクり合い」の事例を紹介した。これでも以前と比べると、アパレル企業各社は知的所有権に対して認識を強めているのだから、昔はどれほどの無法地帯だったのかを考えると空恐ろしい。業界を傍目で眺めていると、色・柄の知的所有権を守ることは難しいと感じる。一方、ブランドロゴや商標、機能的な特許については、かなり法整備が進んでいるといえる。

 先日、ある組合の方と久しぶりに雑談をした。もう15年も前からの知り合いであるから、昔話でいろいろと盛り上がった。その際、「あの時のワイヤー特許事件には参ったよね」という話題が飛び出した。

 裁判の記録をインターネットで読みつつ、当時の記憶をたどってみると、2006年3月に、シャツの襟やポケットのフラップにワイヤーを縫い込む技法の特許申請が認可された。あらかじめ言っておくと、この認可はその後2008年に取り消されている。この申請を出したのは、大阪市西区に拠点を構えていた量販店向けカットソーアパレルのシー・コムという会社だった。この特許はすぐさま業界紙で大々的に報じられたが、筆者も含めて業界関係者の多くは疑問を抱いた。なぜなら、シャツの襟やポケットのフラップにワイヤーを縫い込むというこの技法は、シー・コムが開発したものではなかったからだ。

 シャツの襟やポケットのフラップにワイヤーを縫い込むとどういう効果があるのかというと、襟やポケットのフラップの形を指でつまんで折り曲げて自由に変えることができる。襟やポケットフラップを通常の洗濯ジワではありえないような形状に変化させて楽しむことができる。

2004年には広まっていたワイヤーを縫い込む技法

 シャツの襟やポケットのフラップにワイヤーを縫い込む技法のルーツは諸説あるが、少なくともこの会社が特許を出願した2004年7月以前に使用したメーカー、ブランドがいくつもある。現に筆者も2002年か2003年ごろに他社のファミリーセールで襟にワイヤーが縫い込まれた半袖シャツを購入している。

 このワイヤーを縫い込む技法は2004年までの時点で広まっていた。これが業界関係者の多くが一致する見方である。人によっては1990年代後半から2000年代前半のパリコレクションやミラノコレクションに、この技法で作ったシャツを出展していたフランスやイタリアのブランドもあったという。まさかフランスやイタリアのラグジュアリーブランドが、ピーク時の年商が8億円しかなかった大阪のカットソーアパレルの企画をパクるとは考えにくい。

 多くの業界関係者が当時疑問を抱いたのは「襟にワイヤーを縫い込むという業界ではポピュラーな技法を、どの企業も特許申請していないからといって特許申請するのはありなのか。しかも、その技法を自社で発明したわけでもないのに」という点である。過去をさかのれば様々な技法が日本でも生まれている。例えば、ジーンズのストーンウォッシュやケミカルウォッシュといった洗い加工の技法も日本で生まれたとされている。となると、当然、最初に開発した洗い加工場がどこかにあるはずだ。今から30年以上前のことであるから特許申請などは思いもよらなかったのかもしれない。特許申請しなかったため、これらの技法は日本だけではなく世界中にまで広まっている。

コメント7件コメント/レビュー

そもそも、出願前にマッキンゼー同じ技術を使用した製品があれば、公知の技術として、特許としては無効。一旦認可されても裁判で無効にできるはずでは?(2013/03/06)

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「既に広まっている技法を特許申請した会社」の著者

南 充浩

南 充浩(みなみ・みつひろ)

フリーライター、広報アドバイザー

1970年生まれ。洋服店店長を経て繊維業界紙に記者として入社。その後、編集プロダクションや展示会主催業者などを経て独立。業界紙やウェブなどに記事を書きつつ、生地製造産地の広報を請け負う。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

そもそも、出願前にマッキンゼー同じ技術を使用した製品があれば、公知の技術として、特許としては無効。一旦認可されても裁判で無効にできるはずでは?(2013/03/06)

道義が云々は法律とは関係ありません。法律上定義のないものがモラルやマナーに違反していようと裁くことは不可能です。人の善意に期待して期待が外れたから「それは道義に反する」といったって世界では通用しないでしょうに。(2013/03/05)

経過を知らない者として、「資金繰りが苦しくなったことによる小銭稼ぎが目的」だっただろうという推測には賛成するのだが、どうも釈然としない。◆まず、特許は申請自体にカネがかかる。単に申し込むだけ(この時点では特許では無い。)でカネはかかる(今は1万5千円)うえ、申し込んだ内容が特許に値するかどうかは、別途審査請求(同11万8千円。ここから初めて、特許に値するかどうかを判断して貰える。判断の結果、否決もあり得るので、まだ特許ではない。)がかかり、特許が成立すれば特許料(同1万1千4百円/年。払わないと、その時点で特許でなくなる。当然、その後は他者がパクって良い。)が必要。全部自分で申請することは可能だが、たいていは書類が面倒なので(同じ内容でも、書類が悪いと特許が認められないこともあるためプロに依頼することが多い。)特許事務所に依頼すると、それはそれで経費が必要。タグが50円で売れたところで、ペイするとは思えないところが前述の釈然としないところだ。◆ちなみに、他人の発明でも法的には「先出願主義」を取っているため、申請者が発明者とイコールである必要すら無いことは知っておいて損は無かろう。パクリでも特許は法的に成立するわけだ。否定するためにもカネがかかるため、出願だけしておく(前述の1万5千円で済むし、後からパクリ者が来ても「先に出願した」と特許庁自体が証明してくれる。)という手段が横行しているのである。(2013/03/05)

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