前回は、日本の海洋エネルギーの概要と波力発電を紹介した。今回は潮流・海流そして温度差発電の開発状況を解説する。海洋資源の象徴とも言える黒潮や、膨大な賦存量を誇る表層と深層の温度差をいかに活用するかのチャレンジである。
潮流・海流は、一定以上の速度で流れる海水のエネルギーを利用する。風力発電と同じ原理でエネルギー設備としての技術的な課題は小さく、空気(風)に比べて海水は800倍の密度を持つ。一方で、その高密度ゆえに羽根の長さに限界がある。また潮流・海流は速度が遅く、秒速2m以上の場所の確保がポイントになる。
潮流は太陽、地球、月の重力の影響を受けて、1日に4回生じる潮の流れを利用するもので、特定の海峡や水道で生じる。場所は限定されるが、陸に近く送電投資負担は相対的に小さく、潮の流れは予想できる。
海流は、偏西風などにより生じる幅百km以上に及ぶ長大な流れで、膨大なエネルギーを持つ。常に一定方向へ流れる点は長所だが、陸から遠く海底までの距離が長い。日本領海内の海流の代名詞は黒潮だが、黒潮の蛇行という言葉があるように、流れが変わることもある(資料1)。

開発は、潮流で事業化を進めていき、海流利用を目指すということになる。前々回紹介したように、海外では大企業がベンチャーと組み有望な潮流海域(タイダルレンジ)で競うように実証事業の準備を進めている。大規模な潮流発電群(タイダルアレイ)の計画が登場している。
日本では、1980年代に日本大学が来島海峡において世界初の潮流発電に成功した。その後、日本大学や新日本製鐵が研究を行い、2002年には海上保安庁が明石海峡に浮灯標電源用の小型システムを設置したが、本格的な実証研究は行われていない。だが、ここへきてNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)を中心に、海洋エネルギーの技術開発に力を入れるようになった。
総合力で潮流に挑む川崎重工
川崎重工業は、海洋エネルギーのなかで潮流発電に着目する。同社は、船舶プロペラ、潜水艇、海洋技術、ガスタービンなど、多くの事業基盤を持つ。その総合力を活かせると判断した。2011年にNEDOの海洋エネルギー技術研究開発事業に採択され、国内の海域調査などを実施した。ゆくゆくは黒潮での海流発電も視野に入れる。
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