• ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP

ホントに乗れる木を使った玩具のような観光列車

“非常識”を支える車両造り~九州旅客鉄道

2013年3月27日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

車両の内装、外装に木材を使い、乗降ドアからは「煙」が出る――。JR九州では前代未聞の列車を造り、観光の目玉となっている。常識を覆す、数々の取り組みを支えたのが、試行錯誤を経て生み出した車両製造技術だ。

 鉄道業界の「異端児」――。

 九州旅客鉄道(JR九州)は長らく、こう呼ばれてきた。

 その理由は、同社が運行する数々の観光列車にある。ガラス張りの展望室を備える「SL人吉」(鹿児島本線・肥薩線の熊本駅~人吉駅)や、木のボールプールで遊べる「あそぼーい!」(豊肥本線の熊本駅~宮地駅)...。

 九州各地を走る観光列車は現在、計9種類。これらのデザインは、ホテルや商業施設、駅舎、列車など幅広く手がけるドーンデザイン研究所の水戸岡鋭治代表が担当している。「最新鋭の技術と最高に贅沢な空間を組み合わせれば、どこにもないオンリーワンの観光列車を造ることができる」と水戸岡氏は説明する。

 一見するとデザインばかりに目を奪われがちだが、これまで水戸岡氏が手がけてきた観光列車は、デザイン、機能ともに、鉄道業界の常識を覆している。建築業界などのノウハウを鉄道業界に持ち込み、鉄道車両に適した工夫を施すこと。これは、JR九州の技術革新があったからこそ実現している。

 その代表が木を使いこなす技だ。

 「木の玩具のようなリゾート列車」。2009年10月から運行を始めた「海幸山幸」(日豊本線・日南線の宮崎駅~南郷駅)は、鉄道車両に木を使うJR九州の技術が、随所に盛り込まれている。

 そもそも鉄道車両で木を使うには、様々な課題を解決する必要がある。車両は走行中、常に細かな振動を受け、カーブや坂では上下左右に車両がたわむ。鋼ほど弾性のない木は、こうしたゆがみに弱い。鋼に比べて破損しやすくなるので、維持管理に手間がかかる。火災に備えて木材の難燃、不燃加工も必要になり、使い勝手が悪いのだ。

 それにもかかわらず、海幸山幸には車両の床や座席、壁面、カウンターなどのあらゆる場所に木が使われている。さらに鉄道業界では初めて、車両外壁にも地元の飫肥(おび)杉の板を張った。この外壁に木材を張る作業は、特に試行錯誤の連続だったという。

 当初は木材を直接、車両の外壁に張りつけることが検討されていた。だが「仮に走行中に木材が剥がれ落ちれば、大きな事故につながりかねない」(JR九州・鉄道事業本部運行部の大坪孝一担当部長)。走行中の振動に耐え、外壁の板が落ちないようにするには、複雑な施工が必要となった。

 検討を重ね、車体に板を直接張るのではなく、車体に台座を溶接し、そこに木材をボルトで固定する方法を考え出した。強度を高めるため、装着する厚さ1.1cmの板の裏には厚さ2mmのアルミニウム板を接着。アルミ板と一体化させた飫肥杉を車両の台座にボルトで固定し、木材が落ちる危険を避けた。

 車両側面に取りつけ用の台座や木材、アルミ板を装着すれば、当然、車両の横幅はそれだけ広がる。だが在来線の車両横幅は3mまでと決まっている。海幸山幸は、廃線となった高千穂鉄道の車両を改装したもの。「車両の幅を規定される3m以内に何とか収めること。そのために、板の厚みを何度も調整した」(大坪部長)。

 車両内部の床、座席、壁面に使われる木材にも設置時の工夫は多い。車両は走行中、上下左右にねじれの力が加わる。その中で弾性の低い木材を固定するには、ビスを打つ場所も緻密に算出しなくてはならない。「何十年も車両内装に木材を使い、培ったノウハウがあるから、実現できた」とJR九州・運行部車両課の榎田正春主査は話す。

コメント6件コメント/レビュー

北薩の故郷を離れて半世紀、夜行列車で昼過ぎに京都に着く時代だった。数えるほどしか帰省してないが博多まで新幹線が開通、博多からの在来特急が木製の内装に成ったのを新鮮で懐かしかった。効率と費用効果のみの経済性優先は限界に見える。「そんなに急いで何処へ往く・・・!」この姿勢は続けて欲しい。(2013/03/27)

「大人の「のりもの図鑑」」のバックナンバー

一覧

「ホントに乗れる木を使った玩具のような観光列車」の著者

日野 なおみ

日野 なおみ(ひの・なおみ)

日経ビジネスクロスメディア編集長

月刊誌「日経トレンディ」を経て、2011年から「日経ビジネス」記者。航空・運輸業界や小売業界などを担当。2017年4月から現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント

いただいたコメント

北薩の故郷を離れて半世紀、夜行列車で昼過ぎに京都に着く時代だった。数えるほどしか帰省してないが博多まで新幹線が開通、博多からの在来特急が木製の内装に成ったのを新鮮で懐かしかった。効率と費用効果のみの経済性優先は限界に見える。「そんなに急いで何処へ往く・・・!」この姿勢は続けて欲しい。(2013/03/27)

無理だ、と諦めるのではなく、色々な方法を考えて実現させるところが凄いですね。「ななつ星in九州」乗ってみたいけど、おいくらなんでしょうね…?(2013/03/27)

「乗って楽しい」を追求してるんですね。 鉄道ファンでないですが、運転席や車掌席の向こう側に広がる風景や、カーブの折に見える他車輌に魅せられり、散歩してて踏み切り超える時、線路が延びている様に魅入る事が時折あります。 だから、なんとなく観光客増えてるっていうのも納得です。(2013/03/27)

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

閉じる

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本の経営者は、経験を積んだ事業なら 失敗しないと思い込む傾向がある。

三品 和広 神戸大学教授