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行政任せでは原形に戻すことしかできない

2013年3月18日(月)

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 前回は、被災地の震災がれきが環境省の発表数字よりもはるかに片付いている理由を紹介した。2月に現地を見て、もう1つ驚いたことがある。復興のボトルネックと言われていた震災がれきが片付いたのにもかかわらず、市街地の復興はペースアップするどころかペースダウンしているようにも見えたことだ。

原形復旧のジレンマ

 今回の大震災からの復旧・復興事業では、公共施設の原形復旧とグレードアップ復旧の2つの考え方の間に溝が生まれている。

 特別の事情がない限り、災害復旧事業は原形復旧の原則で行われる。これは縦割りの組織において、「他機関が所管する施設は災害前の状態に復される」という暗黙の前提に立てるので、他機関との総合調整が不要で、自機関が所管する施設の復旧だけを迅速に予算化し、着工できるというメリットがある。

 これに対し、グレードアップ復旧では、海岸堤防の高さと道路の高さ、上下水道管敷設の勾配のように、複数の機関が所管する施設が互いに影響を及ぼし合うので、他機関と総合調整をしないと着工はおろか、基本設計も予算査定もできない。縦割りに慣れ切ってしまった現在の官僚は、これほどの大災害を総合調整してグレードアップ復旧したという経験を持たない。

 そこで国や県は助言者となり、グレードアップ復旧を含む復興計画を市町村単位に分割して丸投げした。しかし、公共事業は国(各省庁)直轄、県・市町村所管の施設が複雑に絡み合っており、市町村に丸投げしても総合調整できるとは思われない。国や県は、市町村の計画や要望を無視して原形復旧で着工し、市町村の復興計画は棚上げにされるということになりかねない。

 行政からも民間からも、復興に対して斬新なアイデアはいろいろと出されている。しかし、結局は総合調整ができず、原形復旧という硬直的な考え方や体制から抜け出すことができないジレンマの中で、復興予算ばかりが膨らんでも、現場には停滞感が漂い始めている。

 震災がれきの撤去が終わった被災地では、ようやく復興事業が本格的に始まろうとしている。ただし、復旧が復興に結びつくとは限らないほど、今回の震災の被害は壊滅的だった。そこで津波に備える堤防や水門、中核化・集約化が必要な港湾や漁港、かさ上げや移転の必要な道路や市街地など、さまざまな施設がグレードアップの対象となっている。しかし、ふたを開けてみると原形復旧の域を出ない事業が大半である。

がれきは消えたが復興は始まらない宮城県南三陸町(今年2月)

コメント2

「東日本大震災から2年、疑問符だらけの東北の復興」のバックナンバー

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「行政任せでは原形に戻すことしかできない」の著者

石渡 正佳

石渡 正佳(いしわた・まさよし)

千葉県県土整備部用地課土地取引調査室長

1958年千葉県生まれ。産廃Gメン時代に出版した『産廃コネクション』(2002年)が2003年「日経BP・BizTech図書賞」を受賞した。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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