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3Dプリンターは生産の常識を覆せるか

カバーを切削で造るアップルとフォックスコンに学ぶ

2013年3月21日(木)

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 最近、経済誌やテレビなどで3Dプリンターの話題を目にする機会が増えてきている。火付け役はクリス・アンダーソンの『MAKERS』(NHK出版)だが、確かに「誰もが作り手になれる」というコンセプトは心を躍らせる。一方で、3Dプリンターへの過熱する期待に警鐘を鳴らす識者の意見もあり、現在の実力を鑑みればうなずける点が多い。それでも注目したいと思わせるのは、生産の常識を覆す可能性を秘めているからだ。

「3Dプリンター」ブームの火付け役となった『MAKERS

 現代において最もポピュラーな大量生産の手段は、金属ならプレス加工、樹脂なら射出成形だろう。これらは、加工法の形態こそ全く異なるが、いずれも金型を使うという点が共通している。金型は、それ自体を造るのに多くの手間や費用がかかるものの、いったん造ってしまえば安価かつ短時間で量産できるのが利点だ。

 一方、3Dプリンターは主に樹脂の成形になるが、初期投資はそれほどかからないものの、1個当たりの成形コストや成形時間はかさむ。従って、これまでは製品開発における試作や、数百個程度の製品の生産といった用途で主に使われてきた。

金属筐体を切削加工

 このように、ある水準以上の生産量であれば金属でも樹脂でも金型を使って加工するのが製造業の常識だった。その常識をあっさりと覆したのが、米アップルの「iPhone」や「iPad」である。iPhoneやiPadを造っているのは世界最大のEMS(電子機器の受託製造サービス)企業である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業であることは既に知られているが、ホンハイの生産子会社富士康科技(フォックスコン)ではiPhoneやiPadの金属筐体をプレス加工ではなく切削加工で造っている。

「iPhone」の金属筐体は切削加工で造っている

 これは、プレス加工ではアップルが要求する品質を満たせなかった故の措置といわれるが、iPhoneやiPadほどの生産量の金属筐体を切削加工で造るのは、それまでの常識では考えられないことだった。製造業では、今でも、プレス加工で造れなかったものをプレス加工で造れるようにすることが技術的な革新として認識されているし、多くの場合は実際にそう認識して差し支えない。だが、アップルとフォックスコンはその逆を行って大成功を収めたのである。

 アップルが求める生産量を実現するために、フォックスコンは日本製の工作機械を大量に導入し、日々膨大な量の金属筐体を削り出している。iPhoneやiPadほどの生産量だからこそ成り立つ面があるとはいえ、生産の常識を覆すには十分だった。

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「3Dプリンターは生産の常識を覆せるか」の著者

高野 敦

高野 敦(たかの・あつし)

日経ものづくり記者

2003年東京大学工学部機械工学科卒業、同年日経BP社入社。入社以来日経ものづくりの記者として、機械安全、製造業IT、設計のモジュール化(モジュラーデザイン)、医療機器などの分野を中心に取材している。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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