• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

TPPやFTAに反対するなら、まず条文をよく読もう

薬や治療費は高騰するのか?:医療編2

2013年3月27日(水)

  • TalknoteTalknote
  • チャットワークチャットワーク
  • Facebook messengerFacebook messenger
  • PocketPocket
  • YammerYammer

※ 灰色文字になっているものは会員限定機能となります

無料会員登録

close

 突然ですが、筆者は「日本は何が何でもTPPを締結せよ」、と、ここで主張する気はありません。ですが、韓国研究者の一人として、TPP参加が国益に叶わないとする例証に、一足先に韓国が米国と結んだFTA(自由貿易協定)を挙げるのはどうか、と思っています。

 韓国国内では締結の前から現在に至るまで、FTAによる影響を危惧する声が絶えません。しかし筆者が見る限り、その危惧はFTAの条項をきちんと読めば根拠のないものであったり、そもそもFTA締結以前から別の協定が結ばれているものだったりすることが非常に多いのです。

 条項を熟読するのは、専門家以外にはなかなか荷が重いものですし、本連載も必ずしも読みやすいものとは言えないかもしれません。しかし、国際間のものに限らず、約束事について、条文をきっちり読まずに論じるのはどう考えても間違っています。

 「結論だけ示してくれ」という方に配慮して、細かい部分は囲みや脚注にするなど、工夫していこうと思いますが、少なくとも国際条約に関しては、「細部を語らずに説得力のある説明はできない」と、私は考えております。

 危機、国難を叫ぶ声は耳に届きやすい。しかし、彼らが本当に条文を真摯に読んだのかどうかは、常に問わねばならない。韓米FTAを巡る韓国内の報道や論争を見て、強く思います。

薬価暴騰、盲腸の手術で100万円!?

 さて、前回(「『米国の圧力で医療は崩壊』する?しない?」)に引き続き韓米FTAの医療分野を扱います。今回のテーマは「営利法人が認められることにより医療費が青天井になる」、「薬の価格を決定する際に、政府などから独立な検討機関が評価することにより、薬価が急激に高くなる」という説についてです(もし今回からお読みになるのでしたら、前回の後半の、韓国の医療保険制度についての説明を、先にお読みになると理解がしやすいと思います。上のリンクをお使い下さい)。

 最初に「営利法人が認められることにより医療費が青天井になる」といった主張です。

 この説は韓国のインターネットやツイッターを通じて流布していますが、韓国最大の新聞、朝鮮日報によれば、「韓米FTAの発効後に医療機関が民営化されれば、胃の内視鏡が4万ウォンから100万ウォンに、心血管造影手術が14万ウォンから430万ウォン、冠状動脈迂回手術が350万ウォンから4140万ウォン、虫垂炎手術が30万ウォンから900万ウォンに跳ね上がる(1ウォンは約0.08円)」と、ツイッターで広まったそうです。なお同紙はこの主張を「怪談」と断じています(注1)。

 ハンギョレ新聞は、「韓米FTAが発効すれば、医療サービス、教育サービス、郵便配達サービス、通信サービスなどで、アメリカ企業が参入しやすくなると、アメリカ商務省が報告している」と報道しています(注2)。その上で、韓米FTAによって、経済自由区域内で営利病院を設立する際の障壁がなくなったとしています。

 さらに京郷新聞やハンギョレ新聞は、「営利病院に問題が生じても、営利病院の閉鎖は不可能である」、「営利法人の許可が固定化してしまう」との趣旨の報道を行っています(注3)。

 「許可が固定化」というところは、説明が必要ですね。現在、韓国では営利法人が医療機関を設立することはできず、特区においてのみ許可されます。FTAの締結以前ならば、特区の根拠法から営利医療を許可する条文を削除(あるいは特区の根拠法を廃止)するなどして、特区も含めて全国すべてで「許可しない」方針に戻すことができました。

「日本もTPPで医療崩壊」の元ネタに

 韓米FTAにおいては、医療サービスは未来留保とされており、これにかかる政策はどのように変えてもいいのですが(「ラチェット条項」は適用されないわけです)、特区法に関する事項については留保から外されています。

 よって特区において営利医療機関の設立許可を禁止した場合、市場アクセス義務に抵触する可能性が出てきます。これをもって「許可が固定化されてしまう」という反対論が出てくるわけです。特区という限定された地域についてですが、確かに「営利病院の許可が固定化する」可能性は否定できません。

 これらの主張はそのまま日本に伝わり、「韓国ではFTAで営利病院が認められたので、アメリカ型の営利医療法人による高額な診療費が、韓国の医療サービス費の標準となる」、「自由経済区域で営利病院の設立が認められていることが蟻の一穴となり、韓国全土にこれが広がることとなる」といった話に膨らんでいるようです。

 韓国政府の反論を見る前に、韓国で設立が認められている医療機関の形態について説明が必要でしょう。

コメント6

「TPPを議論するための正しい韓米FTA講座」のバックナンバー

一覧

「TPPやFTAに反対するなら、まず条文をよく読もう」の著者

高安 雄一

高安 雄一(たかやす・ゆういち)

大東文化大学経済学部教授

1990年一橋大学商学部卒、同年経済企画庁入庁、調査局、外務省、国民生活局、筑波大学システム情報工学研究科准教授などを経て現職。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

日経ビジネスオンラインのトップページへ

記事のレビュー・コメント投稿機能は会員の方のみご利用いただけます

レビューを投稿する

この記事は参考になりましたか?
この記事をお薦めしますか?
読者レビューを見る

コメントを書く

ビジネストレンド

ビジネストレンド一覧

閉じる

いいねして最新記事をチェック

日経ビジネスオンライン

広告をスキップ

名言~日経ビジネス語録

日本全体として若い世代にもっと所得の分配をしていくべきだと思う。

川野 幸夫 ヤオコー 会長