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「発送電分離」方針が開けたパンドラの箱

賠償、技術、事業リスク、安全保障…原発問題が抱える火種

2013年4月5日(金)

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 安倍晋三内閣は4月2日、「電力システムに関する改革方針」を閣議決定した。地域ごとに独占を認めている現在の電力供給の仕組みを見直し、家庭ごとに電力会社を選択できるようにするなど、3段階にわけで改革を進める方針を明確にした。

 まず2015年をメドに「広域系統運用機関」を新設。地域を越えて足りない電力を融通しやすくする。2016年をメドに新しい発電会社が家庭向けに電力を販売することを認め、企業向けから家庭向けまですべての電力販売を自由化する。さらに“懸案”である既存の電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」も盛り込み、2018年~2020年をメドに実現を目指す。

独占体制を守るための「発送電分離」阻止

 もともと発送電分離には電力業界だけでなく所管官庁である経済産業省内にも根強い反対論があった。全国10の電力会社(沖縄を除くと9つ)がそれぞれの地域の独占権を握る「10電力体制(9電力体制)」は、電力の安定供給の要だと信じられてきた。独占を認めることで「総括原価主義」と呼ばれる電力料金の決定方法がとられ、コストに適正利潤を上乗せして消費者から料金を得られるようにした。この結果、電力会社は競争から解き放たれ、停電や事故を起こさず、高品位の電気を安定的に提供することだけに突き進んだ。その独占体制を守る最大の砦(とりで)が「発送電」の一体化維持、つまり「発送電分離」阻止だったのである。

 実は日本でも「発送電分離」の議論があと一歩のところまで行ったことがある。バブル崩壊後の1990年代後半、産業界から「日本の電気料金は高すぎる」といった批判が巻き起こったのだ。加盟国拡大などもあり、EU(欧州連合)が電力市場の自由化に大きく動いていたことも追い風だった。

 ところが2000年の夏から翌年にかけて、米カリフォルニア州で大規模な停電が発生。これを理由に電力業界などからの反対論が優勢となった。2003年にもイタリアで大停電が起きるなど、電力自由化のリスクは大きいというムードが広がっていた。日本では大口発電事業への参入など一部が自由化されてきたが、実際は10電力の独占体制が維持されてきた。

 それが一変したのは2011年の東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故だ。安全だと言い続けてきた原子力発電のリスクが国民の目に見える形で顕在化したからだ。民主党政権は最終的に「2030年代に原発ゼロを可能とする」エネルギー供給体制を整備するとして、太陽光や風力などの新エネルギーの拡大を打ち出す一方で、発送電分離などの電力システム改革にも取り組む姿勢を見せたのだ。結局は政権交代後に安倍内閣が閣議決定することになった「発送電分離」だが、もともと民主党政権時代に路線が敷かれたものだったのだ。

 原発事故に直面した経済産業省も若手の課長級を中心に、「脱原発依存」はもはや不可避で、「発送電分離」など自由化を大きく進めなければ電力コストの上昇で早晩やっていけなくなる、という見方が多くなっていた。

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「「発送電分離」方針が開けたパンドラの箱」の著者

磯山 友幸

磯山 友幸(いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

ジャーナリスト。1962年東京生まれ。早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞で証券部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め2011年3月末に独立。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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