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若者たちがデートで訪れる国立チェルノブイリ博物館

「ここで福島展をやりたかったの!」

2013年4月12日(金)

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 「みなさん、聴いてください。私はチェルノブイリ原発から40キロのところで暮らしていました。だから、今日はみなさんにしっかりと博物館の人の説明を聞いてチェルノブイリのことを考えてほしいのです。いいですか?」

国立チェルノブイリ博物館にやってきた小学生たち

 私がチェルノブイリ博物館を訪問した時、ちょうど小学生たちのグループが到着した。

 国立チェルノブイリ博物館はウクライナの首都キエフにある。ここにはチェルノブイリ原発の立ち入り禁止区域である30キロ圏内には入ることのできない18歳未満の子どもたちが毎日のように何グループも訪問している。駅前でチェルノブイリ博物館はどこかと何人かの年配の方に聞いてもわからなかったが、チェルノブイリ原発事故当時は生まれていなかったような若者たちの間ではよく知られている博物館らしい。

 博物館に入ると左手に、チェルノブイリ被災者による福島原発事故被災者へ向けられた詩と日本の新聞社から譲ってもらったという事故当時の写真のスライドショーが展示されていた。

博物館のエントランスに飾られているチェルノブイリの被災者による福島の人々への想いを込めた詩

事故を知らない小中学生が次々と訪れる

 「日本から来ました」
 と、私が言うと、

 「オーディオガイドは日本語のものもあるんですよ」

 と、チケット売り場の係の人に案内された。福島原発事故後、日本人が多く訪れるようになったため、日本語のオーディオガイドも用意したのだそうだ。

 1992年4月26日、チェルノブイリ原発事故からちょうど6年がたった日に、チェルノブイリ博物館はオープンした。事故後、巨大な共産主義国だったソ連が崩壊し、ウクライナはチェルノブイリ原発という負の遺産を抱えての独立となった。そのウクライナの首都であるキエフに博物館がオープンしたばかりの頃は展示物も200点ほどしかなかったが、被災者やリクビダートル(事故収束作業員)らの協力を得て、今では7000点以上の展示物を見ることができる。

作業員による事故収束活動の記録
作業員らの写真。放射能のマークがついた人は亡くなったことを表している

 博物館の価値が認められ、1996年には国立博物館として登録された。博物館には延べ90カ国以上、年間7万人以上の来館者がある。博物館はチェルノブイリ原発事故の経緯や避難の過程、事故収束活動や除染活動、極秘資料、被災者の悲劇の数々を紹介するだけではなく、支援を通して築かれた外国人との友情や、結婚や出産といった被災者たちのその後の幸せの1ページも紹介している。その中にはもちろん、広島の原爆のすさまじさや、日本人による医療支援を伝えるコーナーもあった。

 私が見学している間にも、小学生や中高生のグループが何度かやってきて、博物館の10代と思われるガイドが丁寧に説明している様子に感心した。事故を知らない世代なのに、とても詳細に説明できるのだ。また、美術館でよく見るような腕を組んだり手を繋いだりしながら見学している恋人たちも多く訪問していた。ウクライナ人に関しては、年配の人よりも若い人が多く来ているようだった。そして、もちろんヨーロッパ人や、日本人観光客の姿も見かけた。

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「若者たちがデートで訪れる国立チェルノブイリ博物館」の著者

宮腰 由希子

宮腰 由希子(みやごし・ゆきこ)

ロシア語通訳

ロシア語通訳、NGO「ダール・アズィーザ」事務局長。1983年青森県弘前市生まれ。17歳の時にチェルノブイリに行き現地を視察。2002年~08年、モスクワ国立大学留学。現在はキエフに滞在中。

※このプロフィールは、著者が日経ビジネスオンラインに記事を最後に執筆した時点のものです。

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